【唐櫃山古墳の発掘調査 (4)見つかったもの】
前回紹介した石棺や、石棺が納められていた石槨には、副葬品が伴っていました。多くは盗掘によって失われてしまっていましたが、石棺の中からは、ガラス製の丸玉や小玉、石棺の外には2種の冑(かぶと)や10本以上の鉄鏃(てつぞく)、刀装具や刀剣片、馬具などが見つかったようです。ガラス丸玉は900個以上、小玉は130個ほどが見つかっています。刀装具のうち、金銅製の三輪玉(みわだま)と呼ばれる刀の装飾品は特徴的です。同じ形のものが長持山古墳から見つかったことが調査記録には記されており、長持山古墳との密接な関係が伺えます。
そのほか、埴輪などもいくつか発見されています。家形埴輪や人物埴輪などが知られていましたが、大阪府教育委員会の調査では蓋形(きぬがさ)埴輪と呼ばれる貴人に立てかけるパラソルのような日傘を模した埴輪などが見つかっています。また、平成24年(2012年)に実施した調査では丸い筒の形をした円筒埴輪や、盾形埴輪と呼ばれる盾を模した埴輪などが見つかりました。
円筒埴輪は、埴輪のなかでも一番多く並べられるものです。埴輪というと、人や馬といった可愛らしいものをイメージすることが多いと思いますが、実際は人や馬といった埴輪の数は多くありません。
円筒埴輪を観察するポイントとしては、埴輪に回る細い突起のような「突帯(とったい)」や、孔(あな)の形、よく観察すると埴輪の表面に見える細かい溝のような「ハケメ」です。
今回は突帯の数について注目してみましょう。突帯の数が多いほど、円筒埴輪の背は高くなります。唐櫃山古墳や允恭天皇陵(市野山)古墳とその周辺の例を見てみましょう。
唐櫃山古墳の円筒埴輪は、突帯は6つあります。允恭天皇陵(市野山)古墳では、6つの突帯や7つの突帯のものが確認されています。允恭天皇陵(市野山)古墳の周辺にある、赤子塚古墳(径34mの円墳)では突帯が3つのものと4つのものがあり、潮音寺北古墳(径22mの円墳)では突帯が4つのものが確認されています。こういった突帯の数を見てみると、古墳の大きさによって、突帯の数が違うことが見てとれます。古墳の大きさと埴輪の大きさには、相関性があったのかもしれません。
唐櫃山古墳は全長59mと古市古墳群の前方後円墳のなかでは大きいものではありませんが、主墳である允恭天皇陵(市野山)古墳とほぼ同じ数の突帯をもつ円筒埴輪が並べられていたようです。
(文化財保護課 泉 眞奈)
<この記事についてアンケートにご協力ください。>