昨今、障害のある人への総合的な支援や差別解消のための法令の整備が進み、すべての人が地域で安心して生活できるまちづくり、そして、障害のある人もない人も互いに支えあいながら暮らすことができる地域共生社会の実現が求められています。
障害の有無に関係なく、一人一人が暮らしやすいまちとはどんな姿でしょうか。
今回は、自分らしく輝く市民の皆さんにお話を聞きました。
■多様な形の暮らしを実現
◆「個性や能力を生かせるまち」
障害のある人の生活介護などを行う障害福祉サービス事業所セント・ポプリ(穂積)に通いながら日常生活を送る片岡眞依さん(27歳)に、父親の光弘さん(61歳)、施設スタッフの皆さんも交えてお話を聞きました。
幼い頃、知的障害のある眞依さんは立つことや発話も難しく、ご両親は心配を抱えていたそうです。しかし、保育所での集団生活を経験し、人との関わりを通して、現在では人と話すことが大好きになりました。
眞依さんは自身の幼少期を振り返り、「自分よりも周りの障害のある友達のことが気になってしまって、何かお手伝いできることは無いかと考えてしまう性格でした」と話します。
◇周囲とともに成長する
「セント・ポプリでは、他の利用者とのレクリエーションを楽しんだり、商品を段ボールへ梱包するなどの作業に取り組んだりしています」と眞依さん。
眞依さんがセント・ポプリに通い始めたのは18歳の頃。当時は慣れない環境の中で不安を感じることもあったそうですが、スタッフや他の利用者と関わる中で人とのコミュニケーションもうまくなり、現在では施設のムードメーカーとして、新しく通所し始めた人が早く施設に慣れてくれるよう気にかけられるようになりました。
スタッフの皆さんは「もし眞依さんが居なかったら今のセント・ポプリは全く違う雰囲気になっていたと思う」と話します。
◇自身の将来を見据えて
光弘さんは、「親も年を取り、いずれは自分のことは自分でできるようになってもらわないといけないときが必ず来る」と眞依さんの将来を気にかけています。
現在、眞依さんは、週末にガイドヘルパーと買い物に出かけてお金の使い方を練習したり、一人で寝ることが苦手でしたが、施設への短期入所(ショートステイ)の利用を始めたりするなど、将来的な自立に向けてチャレンジを続けています。
◇障害のある人にも役割を
「障害のある人にも地域や社会で担える役割があると思います。彼女の場合だと、人と話すことが大好きなので、高齢者や子どもの話し相手など、能力を生かせる場があればと思います」と光弘さん。眞依さんも「施設に通う私たちが普段頑張っていることをもっと知ってもらいたい」と語ります。
■それぞれにあった働き方を実現
◆「情報・支援・サービスがつながるまち」
幼少期にSMA(脊髄性筋萎縮症)の診断を受け、ほぼ寝たきりの生活を送りながら、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」のパイロットとして働く西村泉さん(43歳)にお話を聞きました。
西村さんはOriHimeというロボットを遠隔操作することで、豊中の自宅に居ながら東京のカフェ店員として働いています。
「お客様との距離は離れていても、笑顔が見られた時や感謝の言葉をいただけた時は本当に嬉しく、心が触れ合えたように感じ、この仕事をしていて良かったと思います」と西村さんは話します。
◇自分が働いたお金で生活がしたい
10年前に、「自立した生活がしたい」と、他市の実家から、通院していた病院がある豊中に引っ越し、一人暮らしを続けています。
一人での生活も安定し、次の目標を考えた時に感じたことが「自分が働いたお金で生活がしたい」という気持ちだったそうです。しかし、重度身体障害者が安定して働ける仕事は限られているのが現状で、そんな中で見つけたのが、OriHimeのパイロット募集でした。また、一昨年からは市の重度障害者等就労支援特別事業を活用して働く時間を少しずつ増やせているといいます。
◇安心して過ごせるまちへ
「豊中市は障害のある人への理解があり、福祉サービスも整っているので、10年間、安心して過ごせています。〝暮らしやすいまち〟というのは、困った時に必要な情報を届けてくれて、さらに支援につなげてくれるまちのことだと思います」。
◆「困っている人を助け合えるまち」
障害のある人の就労や復職を支援するワンモア豊中(本町)でピアスタッフとして働く金山達也さん(46歳)にお話を聞きました。
ピアスタッフとは、自身も精神疾患の当事者でありながら対人支援を行うスタッフのこと。金山さんも治療を受けながらピアスタッフとして働いています。
「20代後半の頃から症状が出始め、それから入院や引きこもり、生活保護などいろいろなことを経験しました。治療により病状が安定してからは、就労支援を受け障害者雇用の仕事を始めました。一方で、発病前から精神保健福祉士として対人援助職に就きたいという思いもあり、現在のピアスタッフという職につながっています」。
◇自分の経験を人のために
ワンモア豊中ではPC操作のプログラムなどを担当。利用者が、「金山さんに教えてもらったことが企業実習で評価されました!」と報告してくれることもあるそうで、そんな時に、仕事のやりがいを感じるそうです。
また、ピアスタッフとして利用者の相談も受けています。「利用者の中には、障害者手帳を取得するか悩む人や、就職の際に自分の障害を公にするか悩む人もいます。同じ経験をした自分が話を聞くことで、相手の助けになればと思います」と金山さんは話します。
◇それぞれに合った支援を
「豊中市は支援の行き届いたまちだと思います。市の窓口へ相談に行った時も、丁寧に話を聞いてくれて、親身に対応してくれました。困った時に相談できるのは豊中市の良いところだと思います」。
■互いを認め支えあい、誰もが輝けるまちへ
豊中市がめざすまちは、障害の有無にかかわらず互いを認め支えあい、生涯を通じて安心して生き生きとした生活が送れるまちです。市は、3月に「第六次障害者長期計画」「第7期障害福祉計画・第3期障害児福祉計画」を策定しました。これらの計画に基づき、障害のあるすべての人の地域における自立と社会参加の実現をめざして取り組みを進めます。
計画について
【HP】https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kenko/shougai/kanrenkeikaku/index.html
問合せ:障害福祉課
【電話】6858-3282
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