■高槻と発酵文化
◇日本の食文化を担ってきた“発酵”が高槻の銘酒を育んだ。
日本の食文化といえば、発酵食品。高槻の特産品、富田酒もそのひとつだ。
日本酒造りには、米に麹菌を増やしてつくる米こうじが欠かせない。
弥生時代から米とともに発展した高槻に受け継がれる発酵文化は、今も暮らしのそばで多彩な味を生み出している。
高槻では、約2500年前から米作りや、米を中心にした食生活が始まっていたという。山間部で採れる良質な米と、阿武山山系のミネラル豊富な中硬水の伏流水という、酒造りに適した原料に恵まれた富田は、江戸時代には池田、伊丹と並ぶ「北摂三銘酒」に数えられる酒どころとして発展。「富田酒」は最盛期には江戸にも名を馳せた。
米と水、そして発酵を促す微生物の一種、麹菌と酵母。酒造りに必要なものはシンプルだが、発酵により醸造される酒は味も種類も豊富。酒を搾ったあとの酒かすまで余すことなく活用できる。発酵は日本古来の持続可能な知恵でもある。
◆米から生まれる酒の種類と高槻の特産品
□甘酒
蒸米に米こうじ(1)と水を加えて発酵
□貴醸酒
仕込み(2)のなかで水の代わりに酒を加えて造る甘くてとろりとした酒
□どぶろく
もろみ(3)を搾らず、米の粒感を残した酒
□にごり酒
もろみ(3)を粗くこした酒
□粕(かす)漬
富田酒の酒かす(4)を使ってなにわの伝統野菜・服部しろうりを漬けた「富田漬」は江戸時代からの特産品
□粕取り焼酎
酒かす(4)を蒸留した焼酎。酒かすに酵母と水を加えて造ったもろみを蒸留する粕醪(もろみ)取り焼酎も
□クラフトサケ
米を原料に清酒の製造工程を用いた小規模生産の個性的な酒。フルーツを加えるなど工夫を凝らしたものも
○純米 あらばしり(清鶴酒造)
定番酒として楽しめる力強くまろやかな澱(おり)がらみの無濾過生酒
○とんださけ 特別純米(壽酒造)
香りを抑えて米のうまみを引き立たせた味わい重視の定番酒
「自社の酒を使ったクラフトビールも!」
○國乃長 貴醸エール 貴醸GOLD(壽酒造)
清酒を麦汁に加え清酒酵母で発酵させた高槻発の地ビール
○しずり雪(清鶴酒造)
まろやかな口当たりで米の甘みが感じられるにごり酒
○大阪焼酎 國乃長(壽酒造)
富田の酒かすを使った粕醪取り焼酎。上品でクセがない大阪唯一の地焼酎
※富田漬は、服部しろうりが採れる夏場に仕込み、秋から初冬に出回る季節もの。今の時期は入手しにくい
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