上北山村国民健康保険診療所
医師 辻本凌悦
■虫刺され
こんにちは。診療所所長の辻本です。
本日は虫刺されについてお話ししたいと思います。
早速ですが皆さん、世界で最も人を殺している動物をご存知ですか?ライオンやサメを思い浮かべる人もいるかと思いますが、正解は蚊です。その数なんと年間72万5千人です。2023年の日本の出生数は73万人ですから、日本人が一年で増える数と同じくらい世界では毎年人が蚊に殺されていることになります。ちなみに二番目は人(47万5千人)、三番目は蛇(5万人)、四番目は犬(2万5千人)、となっており、二番目以降を全て合わせても一番の蚊には及びません。
蚊がこれほどまで大勢の人間を殺している理由は、蚊が様々な感染症を媒介するからです。蚊に刺されることでマラリア、デング熱、黄熱病、ジカ熱、西ナイル熱などのウイルスや寄生虫に感染する可能性があり、これらの感染症は重症化する可能性が高く、命を落とすことが度々あります。
実際に日本でもこれらの病気に罹患する方や、残念ながら亡くなった方がいらっしゃいます。
あくまでこの話は世界での話になりますので、日本に住んでいる限りは正直ほとんど気にする必要はないのですが、コロナ禍が終わり年間の海外渡航者数が伸び始めている今、日本でもこれらの病気になる可能性が日々高まっています。円安の影響もあり、特に今まではあまり来日されることがなかった地域からの渡航者が増えており、コロナ禍前と比べるとむしろそのリスクは増していると考えています。
また、現実的に地域でも起こりうることとしては、虫刺されによる発疹があり、痕が残ることがあります。
最後に蚊を含めた虫刺されの対策についてご紹介します。前述しました感染症に対する治療は存在しますが、それよりも予防が重要です。結局は刺されないようにするしかなく、正直なところ特別な対策はありません。
昔ながらの長袖長ズボン、虫除け、蚊取り線香、蚊帳が基本です。国立感染症研究所の蚊の専門家によると、蚊に刺されやすいタイプとして、(1)お酒をよく飲む人、(2)体温が高い人、(3)黒い服をよく着る人、(4)足がにおう人、が挙げられています。イメージとしては、体温が上がりそうな人、ないし上がった人、といった感じです。つまりは、しっかりお風呂に入り、昼間はゆったりとした薄手の白い服を羽織ることが、簡単にできる追加の対策となります。
以上、もちろん望んで蚊に刺される方はいないと思うのですが、身近に潜む怖い話をさせていただきました。暑い夏に少しでも涼んでいただけたら幸いです。
参考文献…The Deadliest Animal in the World, Gates Notes(【URL】https://www.nhk.or.jp/minplus/0121/topic090.html)
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