第5回:熱中症について
〜実は初夏から危険です〜
桜の季節も過ぎ、心地よい初夏の季節になってきました。いかがお過ごしでしょうか。茶摘みや農作業で屋外の作業も多くなってくるかと思いますが、今回は熱中症について
(1)熱中症とは
(2)熱中症の症状
(3)熱中症になったとき
(4)熱中症にならないように
の4本立てで話をしたいと思います。
(1)熱中症とは
熱中症とは、体温が上昇しすぎた際に体内の水分やミネラルのバランスが崩れ、体温の調節機能が働かなくなってしまい、臓器が障害されてしまう病気のことを指します。熱中症と診断される人は全国で毎年7万人にも上り、年間100名ほどは熱中症のため命を失い、特に65歳以上の方が最も多いです。
熱中症は屋外で作業する人がなるものと勘違いされやすいですが、実は熱中症が最も多く発生しているのは屋内、それも住居です。これは、ご高齢の方々はあまりクーラーを使わなかったり、暑さを感じにくくなってしまっているためだと考えられます。
また、熱中症は真夏の盛りの8月に多いのですが、実は5月にも既に生じる危険性があります。5月はまだ暑さに体が慣れていない(暑熱順化ができていない)ため、汗をかきにくく熱を放出しにくかったり、ミネラル分が多いベトベトとした汗になるため、ミネラル分の異常を起こしやすいです。
(2)熱中症の症状
軽症では、目の前が真っ暗になったり、気分が悪くなったり、手足のしびれ、筋肉のこむら返り、筋肉痛、血圧低下、顔が青白くなったりといった症状が出ます。ただ、このときはまだ体温は上がっておらず微熱程度で済んでしまっているときもあり、高熱イコール熱中症ではないことに注意が必要です。
II度の中等症は発熱、強い倦怠感、頭痛、吐き気、めまい、大量の汗、動悸、下痢などを来します。
III度の重症は40度前後の高熱で意識がもうろうとします。このとき、肝臓や腎臓、脳に深刻なダメージを負うことがあり、最悪の場合多臓器不全となって命を失います。III度までいくと逆に汗はかいていないこともあります。汗イコール熱中症でもないことも注意が必要です。
(3)熱中症になったとき
熱くてジメジメしたところで先ほどの様な症状を少しでも疑った場合はすぐ応急処置を実施しましょう。具体的には涼しい環境に移動し、なるべく服を薄着にしてうちわや扇風機で扇いだり、氷のうで首や脇の下、太ももの付け根を冷やし、体温を下げます。更にひとつまみの塩を入れた水を飲ませます(近くに塩がない場合は水分だけでも構いません)。無理せず診療所などの医療機関を受診して、点滴治療を受けることも検討ください。
(4)熱中症にならないように
熱中症を起こす原因には「環境」と「からだ」と「行動」によるものが考えられます。
「環境」は高温、多湿な環境で、風が弱いと熱中症は生じやすいです。「からだ」は赤ちゃんやご高齢の方、糖尿病などの持病、飲酒後、体調が悪くて脱水、低栄養気味だったりすると熱中症にかかりやすくなるので注意です。
「行動」としては、激しい肉体労働や慣れない運動、長時間、水分補給ができない環境での作業などで熱中症になる危険があります。
涼しい服装を着て、日傘や帽子などでの日陰を利用し直射日光を浴びないようにして、水分だけでなく塩分もしっかり補給することが大事です。暑さに慣れること(暑熱順化)も重要です。暑熱順化を行う事により、汗で失う塩分を減らし、熱中症になりにくくなります。暑いところでの作業は、7日目までは30分おきに水分・塩分補給と休憩を取るようにしましょう。暑熱順化は4日間高温環境から離れると元に戻ってしまうので、お盆休み明けなども休み前と同じペースで作業を行うのは避けましょう。体調をしっかり整えて元気に作業を行うようにしましょうね!
下北山村診療所 田口浩之
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