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診療所からこんにちは

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奈良県下北山村

第6回:胃腸炎について
〜脱水に陥らないために〜

今年も過酷な猛暑となる予想ですが、いかがお過ごしでしょうか。
家の中でも熱中症、脱水症になる危険性が高まっているため、心臓に病気が無い限りは1日1.5L以上の水分をしっかり取るようにしましょう。さて、今回は胃腸炎についてお話をしたいと思います。胃腸炎にかかると1ヶ月程度体調が悪い日が続くこともあり、時には脱水で入院になってしまうこともあります。そこで今回は、
(1)胃腸炎とは
(2)腸炎を起こすウイルスの特徴
(3)胃腸炎にかかったら
(4)胃腸炎にかからないために
の4本立てでお送りします。

(1)胃腸炎とは
胃腸炎と一括りに言いますが、実際には胃炎と腸炎で分かれます。胃炎は腹痛、吐き気、嘔吐などが主な症状で、胃に炎症が起きることで生じます。一方で腸炎は下腹部痛、下痢が主な症状で、小腸や大腸に炎症が起きることで生じます。また腹痛も、胃で生じると食事を取った際に痛みが出ることが多く、小腸では数分に1回の波がある痛みになることが多く、大腸では15分に1回と大きな間隔で痛みがあり、更に下痢をした後も便意が続くとされています。更に大腸炎では時に血便が出ることもあり、癌や自己免疫の大腸炎と区別するために大腸カメラを受ける必要がある場合もあります。大体は上から下に病原が悪さをするため、胃炎を起こしてから腸炎を起こすのが一般的です。

(2)胃腸炎を起こす原因の特徴
胃腸炎を起こすのは大抵ウイルスです。ノロウイルスやロタウイルスと行った冬に猛威を振るうものの他にコクサッキーウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルスなど多種多様です。非常に厄介なことに、コロナやインフルエンザなどの風邪を起こすウイルスとは異なり、胃腸炎を起こすウイルスは総じてアルコール消毒が効きにくいのです。胃腸炎は主に接触感染、すなわち手から口に伝わり侵入するのですが、どれだけ気をつけていても感染してしまうことがあるのです。実際にコロナ禍ではマスクとアルコール消毒により喉風邪を起こすウイルスを軒並み根絶できていたのですが、腸炎を起こすウイルスだけはいつもと変わらず猛威を振るっておりました。

(3)胃腸炎にかかったら
熱があってもなくても安静にしたほうが回復は早いです。胃炎があるときは食べても吐いてしまうため、半日〜1日程度の絶食はやむを得ませんが、吐き気が落ち着けば適宜消化のよい食事を始めた方が治りは早いです。食べ始めた際には腹痛や下痢が一時的に悪化することもありますが、結果的には腸の壁が再生するのを助けることに繋がります。消化の良いものを食べた方が良いかどうかは専門家でもはっきりした結論はなく、普通のご飯を食べても治りの速さに影響は無いようですが、油の多い食事はもともと下痢になりやすいので避けたほうが良いです。消化の良さそうな食べ物の方が食欲の無いときに口に入れやすいので、おかゆや脂分の少ない肉、魚、卵、りんご、バナナなどを摂ると良いでしょう。うどんも消化の良い食べものと言われていますが、意外と胃の中に固形のまま流れ込むことが多いので、しっかりと煮炊きして1本ずつ噛んで食べると良いです。また水分は一気にゴクゴクと飲むのではなく、スプーンやペットボトルのキャップに少しの水やお茶、経口補水液を入れて口に含み、しばらく飲み込まずに口で転がすようにします。そうすると胃に落ちる前の口や食道の粘膜から水分が吸収されるので吐き気が出にくいのです。この方法で数分おきに1口ずつ飲むのを繰り返すと、3時間くらいでペットボトル1本くらいの水分を摂ることができ、点滴をするのと全く同じ効果があると言われています。是非試してみてください。

(4)胃腸炎にかからないために
口を触る前には必ず手を洗うことを心がけましょう。一般的な腸炎のウイルスには石鹸による手洗いが有効ですが、ノロウイルス、ロタウイルスは感染力が高く、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系消毒剤や家庭用塩素系漂白剤でないと消毒しきれないので注意が必要です。家族内に胃腸炎の方が出た場合にはトイレやタオルなど、触るところをできる限り分けることが重要です。生牡蠣などの二枚貝は生食を避け、しっかりと火を通してから食べるようにしましょう。

下北山村診療所 田口 浩之

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