第7回:院内の漢方薬について
〜西洋と東洋の融合を目指して〜
暑さが非常に厳しいですが、いかがお過ごしでしょうか。しっかりと水分を取り、エアコンを利用して熱中症にならないように気をつけましょう。
さて、今回のテーマは漢方薬です。漢方薬は東洋医学として古代中国で形作られた医療であり、5〜6世紀に日本に伝来してから、「和漢」という独自の考え方も加えられて発展しました。しかし西洋の治療薬と違い、一つの成分で一つの効能を出すものではなく、様々な成分の組み合わせで様々な効能を出すことや、「体の怠さ」「気分のイライラ感」「喉の違和感」などに効果があるため、血液や画像の検査で効果が有るのか無いのかをハッキリさせられず、医学的な研究や論文を生み出し難いのです。そのため医師だけでなく一般の方々からも「本当に効くの?」と疑問を持たれてしまっています。しかし最近では「どういう仕組で効果があるのか」が少しずつ解明されており、さらに一部の漢方薬は「和漢」の考え方を利用し、「この症状にはこれ!」といった形の使い方も可能になってきました。今回は2024年時点で診療所にある漢方について簡単に紹介させていただき、診療所に来るときの参考にしていただければと思っています。
・安中散…主に胃もたれなどに利用します。市販の胃腸薬にも入っていることが多いです。
・葛根湯…言わずと知れた風邪に効く漢方。実は肩の周りの褐色細胞に働いて温める効能があり、肩こりにも効きます。
・葛根湯加川芎辛夷…慢性副鼻腔炎、いわゆる蓄膿症に効果があります。鼻の通りが良くなります。
・桂枝茯苓丸…更年期特有の冷えのぼせに効果がありますが、実は生理痛にも効果があります。
・五苓散…体内の水分量を整える効能があり、慢性硬膜下血腫という頭の中に血腫ができる病気や、頭痛、めまい、腱鞘炎、更年期の手のむくみ等にも効果があり、最近では心不全にも効果があるとして注目を浴びています。
・芍薬甘草湯…筋肉の異常な緊張を取る効能があり、こむら返りやしゃっくりを止める効果がありますが、毎日ずっと飲み続けると血圧が上がるといった副作用が出る可能性もあります。
・小青竜湯…花粉症に効果があります。葛根湯は寒気のする風邪に効果がありますが、小青竜湯は寒気の無い風邪に効果があります。
・清暑益気湯…夏バテによる食欲不振に効果が有るといわれています。
・大建中湯…乾燥させた生姜などの生薬でできており、お腹を温める効果で便秘の人にも下痢の人にも効果があります。西洋の便秘薬に比べて刺激が少なく、癖にならないのも特徴です。お腹の手術の後に飲むと腸閉塞になりにくいという研究結果もあります。
・釣藤散…イライラ、不安で頭痛が出たり血圧が上がる人に効果があります。
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯…寒い地方で有名になった漢方です。手足を温める効果が高く、冷え性や腰から来る神経痛などに非常に効果があります。
・麦門冬湯…風邪が治ったあとにも残る、喉仏より上の喉の違和感や乾いた咳に効果があります。口の中を潤す効果があります。
・八味地黄丸…下腹部を温める効能があり、頻尿、軽い膀胱炎や腰痛にも効果があります。
・半夏厚朴湯…喉仏より下辺りの喉の違和感や、不安やイライラで息が詰まるときなどに効果があります。「和漢」では梅核気といって、「梅干しの種(ヘタ)が喉に引っかかっている」と話す方にズバッと効く驚きの漢方です。
・麻黄湯…体力のある方の風邪には葛根湯よりこちらが良く効きます。特にインフルエンザでは、タミフルという特効薬と同じく、熱が出る期間を短縮させる効果が証明されています。
・抑肝散…イライラ、不安感からくる歯ぎしりや不眠に効果があります。認知症のために困った行動をしてしまうとき(周辺症状といいます)にも効果があります。
・六君子湯…グレリンというホルモンを活性化させ、食欲を増やしてくれます。機能性胃腸症という病気にも使用が推奨されています。
ここで紹介した使い方はあくまで一例です。また院外処方せんで様々な漢方薬にも対応しています。もしも気になる方はお気軽に診療所へご相談ください♪
下北山村診療所 田口 浩之
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