■舟塚古墳の出土品を分析してわかった新発見
今月号では、今年の5月から6月にかけて開催した春季企画展「発掘調査速報展 新たに見つかった斑鳩のお宝」の展示品のうち、舟塚古墳から出土したものについて紹介します。
◇辻金具(つじかなぐ)
辻金具とは、馬に乗るための道具である「馬具(ばぐ)」の部品の一つで、馬の体に巡らせた縦と横の革帯(かわおび)の交点に取り付ける部品のことです。出土した当時は、全体が鉄錆(さび)に覆われていたため本来の姿がよくわかりませんでしたが、奈良大学で行われた分析によると、金や銀、銅の成分が検出されたことから、当初はきらびやかな姿をしていた可能性があります。
◇玉類
「琥珀製棗玉(こはくせいなつめだま)」や、「埋木製切子玉(うもれぎせいきりこだま)」などの玉類が出土しました。
「琥珀製棗玉」の材質である「琥珀」とは、松や杉などの樹液が化石になったもので、黄色やオレンジ色に近い色をしています。出土品はずんぐりした楕円形で、植物の「ナツメ」の実に形が似ていることから、「棗玉」と呼ばれています。近くでは、6世紀中頃に造られた三里(みさと)古墳(平群町)からも出土しています。
「埋木製切子玉」の「埋木」とは、地中に埋没した樹木が完全に化石になる前のもので、光沢のある黒色をしています。出土品は、立方体のそれぞれの角を斜めに切り落とした「切子」の形をしていることから、そう呼ばれています。近くでは6世紀前半につくられた割塚(わりづか)古墳(大和郡山市)からも出土しています。
これらの玉類は首飾りや腕輪などのアクセサリーとして紐(ひも)に通され、被葬者の体を美しく飾っていたことが想像されます。
琥珀は、石材とは異なり、劣化しやすい素材のため、ばらばらになったものも多くありましたが、接合を行うなど、奈良大学によって当初の姿に近づける保存処理が行われました。
◇土器群
春季企画展では、舟塚古墳から出土した高杯とともに、藤ノ木古墳の高杯を参考に展示していました。
「坏(つき)」と呼ばれる須恵器は、つくられた年代が新しくなるほど、口縁部(こうえんぶ)が低く(短く)なる特徴を持っており、二つの古墳から出土した坏を比べることにより、その年代の差が想定されることから、舟塚古墳が藤ノ木古墳よりも古いと考えられます。
今後、新たな発見があれば、あらためてみなさんにお知らせします。
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