年齢を問わず、だれでも気軽に楽しめるダーツゲーム。近年、七ヶ浜町では地区対抗ダーツ大会をはじめ、健康教室、子ども会行事など、町内の様々な場面に取り入れられ、機運はうなぎのぼりです。
七ヶ浜町のダーツは、とにかく明るく、楽しく遊べるゲームですが、このダーツを認知症予防など、学術の側から研究されている方々がいます。果たしてダーツの効果とは?
2月22日に七ヶ浜国際村で開催された「ダーツによる幸福度調査講演会」から二人の先生の講演を抜粋しました。
■演題 ダーツゲームで的を狙う動作はどんな効果??
飯田 忠行(いいだ ただゆき)さん
県立広島大学保健福祉学部理学療法学コース教授。博士(医学)。次世代健康支援研究センター長、診療放射線技師
趣味 マラソン
◇楽しく、遊びながら+元気になる
宮口先生と僕のダーツのコンセプトは、「楽しく、遊びながら、元気になる」。楽しくなければ、続きませんからね。
ダーツの良いところは、的に当たったときの気持ちの良さですよね!その的に当てるという動作が、どのように良いかを今日お話させていただきます。
たちはこれまでの研究で、ダーツを通した高齢者の交流が認知機能と身体機能に良い影響を与え、幸福度を増すということがわかってきました。
男性は催しに誘ってもなかなか出たがらないですね。一回目は、「なんかめんどくさい」となるんですが、二回目は「う~ん、考えておく」。三回目までいくと「じゃ行こうか」となるんです。
60代以上の男性はダーツなら出てくるんです。女性より男性の方が的に届くし当たる。女性は当たりにくい。じゃ教えてやろうかとなりますね。
家にこもってばかりいて出かけなくなると、認知症ではないのですが認知機能が低下してきている状態の「軽度認知症」のリスクが高くなるんです。このため、私たちは軽度認知症の方をいかにもとに戻すか、ダーツを用いて回復できないかを研究しています。
◇ダーツをやると脳みそは忙しい
皆さん、ゴミ箱に紙くずを投げたことありますよね。紙くずが手前に落ちれば、もう少し力を入れて投げようかとなるように、実はゴミ箱に紙くずを投げる行為とダーツを投げる行為は、ほぼ一緒です。
ダーツをして、自分の矢が狙いより下に行ったら、次は肘をちょっと上げたら高く飛ぶんじゃないかとか、手を離すのを早めにしたら上に行くんじゃないかとか。そういうことを考え出すんです。
例えば、0点にするのが上がり(ゴール)の時、あと5点必要だったら、一気に5点を狙うか、2点と3点に分けて狙うかとか、いろいろな戦略を考えます。
ダーツをやると脳みそは忙しいんです。ダーツって非常に頭の体操になるんですね。一投ずつ考え、投げた結果、今の投げ方の何がいけなかったのか、次はどうしようかと考えるんです。ダーツは狙うことが大事!です。
◇三つの効果
ダーツをすることによる効果について、私たちが取り組んだ研究についてお話しします。
介護保険サービスを利用する65歳以上の高齢者62名に協力をいただき、週に1回から3回、ダーツをしていただき、ダーツを始める前と6カ月後の認知機能と身体機能の検査結果を比較しました。
一つ目の認知機能については、すごい認知症まで行ってしまうと改善は難しいのですが、軽度認知症くらいであれば、だいたい改善することがわかりました。
◇身体機能が鍛えられる
二つ目は身体機能について、ダーツは、腕や軸足など身体機能をきちんと働かせないとまっすぐ飛ばないため、逆にまっすぐ飛ばそうとすれば自然と身体機能が鍛えられます。
高齢になると会話が減ってきたりしますね。言葉がだんだんと頭に入ってこなくなるんです。ダーツで脳が活性化してくると注意力が上がり、人の話をよく聞くようになります。
ちゃんと狙ったところに当てたい!と練習すると、脳の前頭葉(ぜんとうよう:思考、やる気、感情、理性などの部分)や頭頂葉(とうちょうよう:外界を認識し、手足など身体全体の感覚情報が集まる部分)が活性化し、身体機能も高まってきます。
また、空間認知能力といって、的までの距離をちゃんと把握して投げることができるようになるというのがもう一つ大事なことと思っています。
そして、三つ目はダーツをすることによるこころの健康。ウェルビーイング(幸福度)ということになります。ウェルビーイングについては、後ほど宮口先生がお話しします。
◇ダーツで緊張ある生活を!
先ほどの0点ちょうどで上がるダーツゲームで、初めのほうでは点数はどうでもいい感じで投げていても、最後のあと5点となったときの緊張感は半端でないですよね。
皆さんは日常、ダーツ以外でそういう緊張を感じたことはありますか?刺激がない生活を送っているとだんだん認知機能が低下してきます。あの緊張感の中でドキドキしながら投げるのも脳の活性化につながると思っています。
ダーツは、みんなでワイワイ遊んだり、点数を競い合ったり、ご夫婦で練習したり。そういう積み重ねがさらに面白いものにし、盛り上がっていきます。これから皆さん、お誘いあわせのうえ、ぜひダーツをやってみていただければと思います。
もう一つは、あそこのおばあちゃん怪しいなと思った方を、ダーツに連れ出していただければと思います。的が高かったら、ちょっと低くして当たる楽しさを教えてあげられたらいかがでしょうか。
◇ダーツの可能性
ダーツによって、身体や認知機能をどれだけ予防できるか、進行をストップさせるかまではダーツはできると思います。
ダーツは、車いすに乗っていても、杖をついていても投げられます。宮口先生のお話によるとパーキンソン病の方が投げるときは、手の震えがピタッと止まったそうです。
また、計算が弱いお子さんが的を狙うことによって計算しだしたりすることがあります。そういう効果も次は狙っていければと思っています。
将来は、じいちゃん、ばあちゃんがマイダーツを持って、孫とのペアで大会に参戦していただけたらと思っています。
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