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【特集】七ヶ浜の農業を守る ~手塩にかけた米は、オール1等米!~(1)

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宮城県七ヶ浜町

草木が芽吹き始めた五月晴れの日、花渕浜で田植えをする光景がありました。振り向くと耕運機の畑を耕す光景と土の香り、七ヶ浜には四季折々の風物詩があります。「うみ・ひと・まち 七ヶ浜」のキャッチフレーズのように、古来、海とともに生きてきた七ヶ浜町ですが、意外と農業については、多くを語られてこなかった面があります。農業は、一見、米や野菜を作る産業と捉えられがちですが、視点を広げてみると、田畑は七ヶ浜町の景観を形作る大切な要素であり、時として防災の機能も併せ持つなど多面的です。しかも、七ヶ浜で作る米は、5年間すべて一等米という快挙。今月は、農業の今と多面的な魅力について、佐藤太郎(さとうたろう)さん(要)と渡邊留四郎(わたなべとめしろう)さん(笹)に伺いました。

七ヶ浜町の面積は、13・19平方キロメートルで北海道・東北一面積が小さい町です。町の地形は中央部から海岸に向けていくつかの尾根が伸び、町全体がちょうど、すり鉢を逆さまにしたような地形をしています。
その尾根のふもとに田畑や住宅地が広がっています。
川がない七ヶ浜町では、古来より堤を作り、沼や雨水を利用して、農業を営んできました。
町の農地の面積は、約144ヘクタール(1ヘクタールは、一辺が100mの正方形の面積)で、町の面積の約1割(10・9%)にあたります。農地のうち、田が全体の4分の3の約109ヘクタール、畑が約35ヘクタールです。現在、農業者は13名と農事組合法人の「ファーム七ヶ浜」1団体が、米を中心に大豆や野菜を作っています。平成23年(2011年)の東日本大震災では、田のほとんどを津波が襲い、作付けができなくなりました。
川がない七ヶ浜町では、田から塩分を取り除く除塩作業は難航を極め、農地が元どおりになるまで3年を要しました。

◎佐藤太郎(さとう たろう)さん(要)
農業委員、前農業委員会会長、前農事組合法人ファーム七ヶ浜代表理事

◎渡邊留四郎(わたなべ とめしろう)さん(笹)
農業委員会会長職務代理者、前広域協定運営委員会会長

■二つの変化
◇圃場整備と農協合併により栽培技術も上がりました。

[佐藤・渡邊]
はじめに、農地の復旧・復興のために国をはじめ、県、町、企業等の皆さま、そして全国からのボランティアの皆さまのご支援をいただいて今日の私たちがあります。これからも感謝を忘れずに農業に励んでいきたいと思います。

[佐藤]
私の家では、農業のほかに海苔もしていました。昔の田んぼは、農道も排水路もないうえ、田んぼは丸や三角、ひし形などいろいろな形がほとんどでした。
あぜ道も細くて車で自分の田んぼの近くまで行くこともできず、一輪車で苗を運んだ時代でした。
今は田んぼが整地されてきれいになりましたね。七ヶ浜町でも昭和39年頃から農地の区画整理や農道、農業用排水路などの圃場整備が始まったんです。田んぼは1区画が基本30アール、30m×100mに整理されました。
田んぼが整理され始めてから、農作業の機械化やトラクターなどの大型化が進みました。

[渡邊]
私は農家の農も知らず、家で多少の田畑があったので親の作業を見よう見まねでしていました。正直農業は半分、好きではなかったんです。
七ヶ浜は土地が狭いものだから、地区内で一町歩(約1ヘクタール:100m×100m)くらい作っていると「あそこは大百姓だ」なんて言っていましたね(笑)。
太郎さんとは同級生で友達でもあり身内みたいなものでしたから、太郎さんには苗の調達など気軽に頼んでいました。
震災後にファーム七ヶ浜を立ち上げる時にも誘っていただき、今は仲間に入れてもらっているだけでもありがたいと思っています。地元にいることでいろいろな情報も共有できています。
これまでで一番影響が大きかったのが東日本大震災でした。ほとんどの田んぼに津波が入りましたからね。こんなに圃場整備が進んだのは震災があったからこそとも言えますね。

[佐藤]
震災前は、会社などに勤めながら自分の家で食べる分くらいの米を作る飯米(はんまい)農家が結構いたんです。
ところが震災で機械が流され、倉庫をなくしたことで一気に離農者が増えました。
農家が大きく変わったもう一つは農協の合併でした。平成14年に七ヶ浜農協が仙台農協と合併しました。
それまでの七ヶ浜農協は、営農として農作物を作ることよりも共済や金融に力を入れていたんです。合併したことによって営農指導にも力を入れるようになりました。
また、それまでは米は売っても野菜を売るということはあまりありませんでした。圃場整備と農協合併により栽培技術も上がり、野菜の販売もするようになりました。その頃から七の市も始まりました。

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