■土いじりのすすめ
▽山本病院院長 山本政秀(やまもとまさひで)
そろそろ花粉症が落ち着いてきた時期でしょうか。
突然ですが、皆さんは衛生仮説や旧友仮説という言葉をご存じでしょうか?環境がきれいになり、感染症が減ったからアレルギーが増えたのではないかという考え方です。後進国よりも先進国で感染症が減少し、アレルギーや自己免疫疾患、うつ病などのメンタル疾患の増加が顕著なことからもいえます。現代では、免疫細胞数の減少や機能低下により炎症をおこしやすくなったことが原因であると説明されています。しかし、衛生的な生活は、有害な感染症を減らすことができるので、必ずしも悪いわけではありません。
一方で、全ての感染症が有害というわけでもありません。中には腸内細菌を代表格として、必要な共生細菌もあります。ホモ・サピエンスの進化の過程で共に進化してきたほとんど無害な病原体、つまり、旧友(寄生虫などの微生物)を排除しすぎてしまい、炎症を旧友に抑えてもらえなくなったことが、現代病が増加した一因と考えられています。
さらに現代人は、ストレスに弱くなったといわれています。土壌との接触が失われ、土壌に豊富に存在する旧友を得る機会がなくなってしまったことで、炎症が起きやすい体質となり、回復力が弱まってしまったといえます。このことが、ストレス惹起性のメンタル疾患が急増している一因だと考えられています。
あらためて現代人は、自然との共生が必要なのかもしれません。強い体と心が必要で、友達をつくり協力しあうことが大事なのです。疲れたときには、たまに土いじりすることをおすすめします。
参考資料:インターネットサイト「m3.com スペシャリストの視点-精神科(菊山裕貴)」(2023-2024年)
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