■愛馬心の深かった利府の人々
2023年6月の暑い日、スポーツ流鏑馬(やぶさめ)大会in利府が宮城県で初開催されました。当日は午前中から初開催の熱気とともに猛暑の夏の入り口でもあり、30度近くに気温も上がりましたが、途中で帰られる方も少なく来場者数1500人以上のイベントが華々しく執り行われました。
色とりどりに着飾った騎手の中に中学生の女の子がいました。他県からの出場者でしたが、過去に不登校で悩んだものの、流鏑馬をはじめ馬との触れ合いを通して社会を知り、学び、楽しみを見つけ、健康になっていったというエピソードの持ち主です。まさしく動物介在教育の典型ではないでしょうか。学習障害や発達障害のある児童生徒にも馬は社会と人間をつなぐ架け橋として、また「通訳者」として役割を果たしてくれる、そんな馬たちが昨年、利府大会の出場馬として中央公園運動場を駆け巡りました。
といいますのも、利府大会で活躍した馬たちは穏やかな日本古来の和種馬であるのと同時にハーフリンガーというフランスの馬種を掛け合わせた、さらに穏やかで人懐っこい性格の、好奇心旺盛な馬でした。競走馬、レースホースであるサラブレットとは違った、レジャーホース、極端な話、自宅で飼えるホビーホースという種類。従来の和種馬は役割が終われば馬肉としての価値でしか判断されることがなくて、人目に触れることもなく殺処分されるのを待つのみでした。近年ホースセラピーという動物介在療養が台頭し、人間と馬との関係も新しいステージに入っています。性格が優しく、人の気持ちを汲んでくれる馬の存在が出てきた時代、引退後も流鏑馬やホーストレッキング、乗馬体験など幅広い範囲で活躍の場が設けられはじめました。
団塊の世代が幼少の頃は馬小屋や農耕馬、荷役を運ぶ馬たちの姿が日常の風景で、競争社会のストレスを、馬をはじめとした身近な家畜、動物たちが癒していたかもしれません。利府村誌には、タイトルどおり利府と馬の密接な関係が記述されています。若い世代がストレス社会に心折れずに向き合うためにもスポーツ流鏑馬や乗馬、フィールドトレッキングをわが町のスポーツ、レクリエーション文化として広げ、村誌の記されている「愛馬心のよみがえり」を実践していきたいものです。
利府町長 熊谷 大(ゆたか)
<この記事についてアンケートにご協力ください。>