(224) 正中(しょうちゅう)の板碑(いたび)
若柳武鎗地区の安養寺(あんようじ)には「正中の板碑」と呼ばれる石碑があります。板碑とは、鎌倉時代から戦国時代にかけて、亡くなった人の供養や生前に自身の死後の冥福を祈るために造られた板状の石碑で、仏などを表す文字やお経の一部、供養の内容、年月日、供養される人や供養を行った人の名前などが刻まれています。
正中の板碑は、高さが125センチメートル、幅43センチメートル、厚さ32センチメートルの角柱型で、碑の上部に阿弥陀如来(あみだにょらい)を表す梵字(ぼんじ)が、その下には「七仏通戒偈(しちぶつつうかいげ)」という経文にある「願諸衆生(がんしょしゅじょう) 諸悪莫作(しょあくまくさ) 諸善奉行(しょぜんぶぎょう)(生きとし生けるものに願う もろもろの悪をなすことなかれ もろもろの善を行いなさい)」という一節が刻まれています。
板碑の造立は、石材の調達や加工など、経費のかかるものであり、もともとは武士のような有力層を中心に広まっていったと考えられていますが、一方で、同じ信仰を持つ人々が共同で立てる「結衆(けつじゅう)板碑」がみられるようになります。正中の板碑は、鎌倉時代後期にあたる正中二年(1325年)七月に、この地域の人々が、現世で功徳(くどく)を積むことにより、死後に極楽往生できることを願って立てた結衆板碑であると考えられています。
この板碑を永く後世に残すため、昭和52年には板碑を覆う鞘堂(さやどう)が建立されました。地域の歴史を刻む貴重なこの板碑は大切に守られ、約700年前の人々の祈りを今に伝えています。
種別:市指定有形文化財(歴史資料)
指定日:昭和53年11月1日
所在地:若柳武鎗字町舘安養寺境内
問合せ:教育部文化財保護課
【電話】42-3515
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