第3回では、ロケットがどれだけ軽くできているかについてお話しします。
◆第3回 H-IIロケット
宇宙に行くためには、機体を軽くして、できるだけ燃料をたくさん積むことが大切です。ロケットの本体はほとんどが燃料タンクです。H-IIロケットの本体の部分を考えてみましょう。1段目の重さは100トン、そのうち燃料は86トンです。つまり打ち上げ時の重さの14%が機体の重さです。これはエンジンなども全て含んでこのくらいの重さになっています。
それでは、他の乗り物はどのくらい軽くできているのでしょうか。同じ空を飛ぶものの代表の旅客機と比べてみます。最新型のボーイングB-787型機を調べてみると、飛行場から離陸するときの重さは約212トン、そのうち燃料の重さが、満タンで約100トンです。つまり、機体の重さが約半分(52%)になります。皆さんが旅客機に乗って離陸した後、目的地に着陸するときは、燃料を使い切って旅客機の重さが半分くらいになっているのです。そう考えるとロケットほどではありませんが、旅客機もかなり軽くできています。
自動車はどうでしょうか。小型で燃費の良い、ハイブリッド車を考えてみます。車全体の重量は約1,600kg、ガソリンは満タンで32kg(43ℓ)とすると、車全体の重さの中で、車体の重さの割合は98%です。ガソリンが満タンでも空っぽでも、重さはほとんど変わりませんね。
では話を戻して、ロケットがなぜそんなに軽くできているのかお話しします。ロケットのボディ、つまりタンクの壁は厚さ2mmくらいのアルミニウム合金でできていて、その合金を削って、写真のようなアイソグリッド構造になっています。このワッフルプレートのような構造がロケットを軽く強くしているのです。補強部分の高さは17mm、厚さは2~3mmです。これはアルミニウム合金の固まりから「削り出し」という方法で作っているので「削りくず」がたくさん出て時間もかかるのですが、軽くて強くすることを優先しています。もちろんこの「削りくず」もちゃんと再利用していますよ。
皆さんのおうちのワッフルプレートも、平らなフライパンより強いはずです!
JAXA角田宇宙センター 吉田誠
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