◆第5回 ボイジャーはどうやって太陽系の外までたどり着いたか?
前回、ボイジャーは太陽の光が十分に届かない距離まで行くので、発電のための太陽電池パドルではなくて原子力電池を積んでいるというお話をしました。今月はどうしてボイジャーはあんな遠くまで行けたか、というお話をします。
ボイジャーはアメリカのタイタンIIIEセントールという日本のH-IIAロケットよりもちょっと小さなロケットで打ち上げられました。多くの探査機を打ち上げた優秀なロケットですが、このロケットの力だけでは、計算上、木星まで行くのがやっとです。それより遠くに行こうとしても、土星、天王星、海王星などにたどり着く前に、太陽の引力で太陽に向かって引き戻されてしまいます。太陽の引力を振り切るためには、速度が必要なのです。
そんな状況で使った方法が「スイングバイ」!「はやぶさ」でも使っているので、皆さんも聞いたことはあると思いますが、実際はどんな技術なのかをご説明します。身近なところで「スイングバイ」に近いこんな場面を想像してください。
・お父さんが前を歩いて、小さな子が後ろから追いかけてくる
・前方のお店で配っている風船が最後の1個になってしまい、子どもが走り出す
・お父さんに近づいたところで、お父さんが後ろに手を伸ばして、子どもと手をつなぐ
・お父さんが手をグルンと回して、子どもの速度を上げて前に投げ飛ばしてあげる(転ばないように気を付けて!)
・子どものスピードは上がり、お父さんのスピードは落ちるのですが、お父さんの体重が重いので、子どものスピードだけがアップしたように見える
これが、スイングバイです(かなり簡単にしました)。「手をつないで前方に放り投げる力」、「お父さんの歩く速さ」がスイングバイではそれぞれ「重力」と「惑星の速度」になります。
燃料を使わないで、惑星の運動と重力を使って人工衛星のスピードを上げるという賢いやり方ですね。我々も自分のエネルギーを使わずに成績を上げよう、成功しよう、なんて考えていると怠け者になってしまいそうなので、地道な努力を続けましょう。
JAXA角田宇宙センター 吉田誠
◆募集!
皆さんからの質問を募集します。
宇宙に関することなら、なんでもOKです。
以下の「広報かくだ」宛てにお寄せください。
(募集期限:9月20日(金))
宛先:〒981-1592 角田市角田字大坊41
角田市役所 広報かくだ行
【メール】koho@city.kakuda.lg.jp
<この記事についてアンケートにご協力ください。>