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自治体の皆さまへ

私たちにできること。(3)

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宮崎県三股町

【育む】
◆演劇ワークショップ「みまた座」
「町の財産となる『人』を育てることで、文化が共に育ち、地域が育つことを見出し、町独自の人材育成に乗り出しました」。平成16年、みまた座の幕開けです。
みまた座は、小学4年生~高校2年生までの子どもたちを対象に演劇の練習・公演のほか、舞台づくりやホールボランティアなどを経験する、「演劇ワークショップ」です。
当時、町立文化会館の業務を担当していた内村陽一郎(うちむらよういちろう)さん(元町職員)に話を聞くと、「この町立文化会館やみまた座が、子どもたちにとって自分の弱い部分が否定されない、許されるような空間にしたいと考えていました」と話しました。
そんな空間になっているからこそ、子どもたちを育んできた「みまた座」は今年で21年目を迎えました。

○大人は大人として
永山智行(ながやまともゆき)さん
みまた座演劇監督 劇作家・演出家 劇団こふく劇場代表
「子どもは、子どもとして過ごす時間を楽しむ権利がありますよね。子どもが子どもでいられるために、大人が大人でいる必要があると考えながら、このみまた座を運営してきました。だから、子どもの言動に『NO』とは言わない、でも、叱る必要がある時には真剣に叱るんです」と、みまた座21期生の開講式を終えたばかりの永山さんは、温かい口調で話してくれました。
21年目を迎えたみまた座、今年は過去最多の35人が参加しています。これまで数多くの卒業生を輩出し、今では“親がみまた座出身”という参加者もいます。「ここは、演劇を教える場という側面もありますが、演劇を通して“生きる”ということがどういうことかを学んでもらう場なんですよ」と話す永山さん。三股にこんな場がある、こんな大人がいる、そして多くの子どもたちが集まっている。設立時に掲げた「町独自の人材育成」は、今も変わらず続いています。
稽古が終わると、子どもたちは会館の事務所に戻り、宿題、おしゃべり、ゲームや追いかけっこを始めます。聞こえてくるのは子どもたちの元気な声や足音。そんな光景を前に永山さんは「ここで過ごす時間が豊かなものであればいいんです。ほら、こうやって好き勝手に遊んでいる子どもたちがいるでしょ?これでいいんです。今一緒にいる人と楽しく過ごすことができたら、こんなに幸せなことはないでしょう。そんなことを、大人になってからでもいいので、気付いてもらえるとうれしいなぁ」と子どもたちに目を向けました。
子どもと大人の“音”が共鳴する空間こそが“子どもたちの居場所”である「みまた座」。そして、そんな場所を守り育てる大人がいます。

今を生きる町民の一人として、または大人の一人として、子どもたちのために、私たちは何ができるのでしょうか。
私たちには、それぞれの事情があります。当然、一人一人子どもに対する価値観は異なり、好意的な人もいれば、そうでない人もいます。さらに、全員が“地域の子どもたちを見守ることができる”わけでも、“子どもたちの活動・学びの場をつくることができる”わけでも、“子育て支援そのものに関わることができる”わけでもありません。日々の仕事や生活で精一杯だという人も多いはずです。
私たちにできること。
それは、この町に生まれてきた子ども一人一人を、温かい眼差しで見守り、育て、社会の一員として温かく迎え入れることです。それは、全てを許容するという意味ではありません。大人は大人として子どもに向き合い、叱るべき時はしっかりと叱り、褒めるべき時はしっかりと褒める。そして、できれば子どもたちへの敬意や愛情を持ち、この町で共に生きる“仲間”として温かい眼差しを向ける。そのように子どもたちと接した時、私たち大人との、強くて温かい“つながり”を、子どもたちは感じるはずです。
そのためにできることは、私たち一人一人、違うはず。私たちにできることはないか、自分にこそできることはないか。たまに思い出して、ちょっとだけ考えて行動してみる。子どもたちは、そんな私たちの姿を見て、また何かを学ぶのではないでしょうか。

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