■美郷町国民健康保険西郷病院
内科の上池陸人です。今回は「ACP」についてお話します。
(1)ACPとは…?
アドバンス・ケア・プランニング(ACP、愛称:人生会議)という言葉を耳にしたことはありますか?
「あなたが大事にしていることや望んでいること、どこで、どのような医療・ケアを受けたいかを、自分自身で前もって考え、周囲の信頼する人たちと繰り返し話し合い共有しておくこと」をアドバンス・ケア・プランニング(ACP)と言います。
(2)なぜACPが必要なのか…?
誰もが訪れる最期の時。最近では「終活」という言葉も普及されるようになり、人生の最期をいかに自分らしく過ごすか、に着目されるようになってきました。
ACPは「現在~最期を自分らしく過ごす」ための、残された人生を前向きに生きていくことができる手段の一つです。
命に関わる大きな病気や怪我をする可能性は皆に平等にあります。もしそうなった時に、どこでどのような医療を受けたいのか、何を行って何を行わないか。これだけは譲れないという思いがあるのではないでしょうか。この「何故その選択をするのか」にあなたらしさが表れます。もちろんご自身で選択できる事がベストですが、命の危険が迫った状態になると、約7割の方が自分で決めたり望みを伝えたりする事ができなくなると言われています。そのような場合でもあなたらしく生きていくためには、あなたの代わりに選択を行う人達があなたの思いを十分理解していなければなりません。そのためACPが必要になるのです。
(3)いつ、どのように行えばいいのでしょうか…?
それは元気な時から始めるのがよいと言われています。
人の考え方は時間や経験などで変わっていくものですから、1度で終えるものではなく、家族や大切な人とともに何度も繰り返し行い、考えが変われば再度共有します。
しかし、元気なうちに自分の死を考えたり、家族や大切な人、信頼できる人たちと死や最期の過ごし方について話したりすることはなかなか難しく、勇気のいるものです。
ACPを始めるにあたっては、まず現在の健康状態や自分の価値観や大切にしていること、これまでの経験などを家族や信頼できる人と話すことから始めます。かかりつけ医を受診した時や、何か病気が発覚した時、健康診断の時など、何かきっかけがある時にすると良いかもしれませんね。そのステップを踏んだあとに、下記のようなどこで、どのような医療・ケアを受けるかを考えます。
(具体例)
治療:治る見込みがなくても自分の納得がいくまで治療したいのか、あるいは苦しみや痛みが少なく過ごせれば無理な治療はしたくないのか。
食事:窒息の危険があっても口からできるだけ食べていきたいのか、あるいは無理のない範囲で食べられる分だけ食べるのか。
最後に過ごしたい場所:最期を迎える場所は自宅がいいのか、あるいは病院、施設なのか。
「最期を自分らしく過ごす」ということは大変難しい難題であり、自分の思ったように死を迎えられる人はほんの一握りかもしれません。ただ少しでも自分の思いや考えを、前もって共有し、自分の意思を代弁できる存在を決めていることで、「最期を自分らしく過ごす」ことに近づくことができると思います。
これら全てを決める必要はなく、現在の思いや考えをざっくりでもいいので、家族や大切な人に伝えておき、考えが変わればその都度伝え、もし自分が意思表示できない場面となった時に自分のことを一番にわかっている意思表示代理人を決めておくこともまた重要です。
(4) 結語
もしACP、人生会議に興味がある、行いたいという方は、かかりつけの病院に相談してみてください。
あなたも元気なうちから、どのように人生を過ごしていくのか、最期を迎えたいのか、考えてみてはいかがでしょうか。
参考:厚生労働省ホームページ 「人生会議」してみませんか
お問合せ:西郷病院
【電話】66-3141
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