■「前賢故実(ぜんけんこじつ)」
本史料は10巻20冊からなる江戸後期の伝記集で、神武天皇から後村上天皇(南北朝時代)までの名君や賢人らの肖像画と漢文での略伝を記したものです。肖像画を担当した絵師は、狩野派や土佐派に学び独自の画風を築いた菊池容斎。朝廷儀式や作法の知識も身に付けた人物でした。
本史料には、平安時代に日向国の受領(ずりょう)として赴任した藤原保昌(やすまさ)や、島津荘の寄進先である藤原北家(ほっけ)の繁栄を築いた藤原道長らも描かれています。これらの肖像画は、後世の多くの画家が参考にしたといわれていて、藤原保昌が笛を吹く姿は明治時代に月岡芳年(よしとし)が描いた「藤原保昌月下弄笛図(げっかろうてきず)」にも見られます。加えて同時代以降、歴史家らが本史料を研究のために借用した記録があることから、日本画のみならず後世の歴史研究にも影響を与えた貴重な史料であることがうかがえます。
※都城島津伝承館は、展示設備改修のため3月15日(金)まで臨時休館しています
問い合わせ:都城島津邸
【電話】23‒2116
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