気になるアノひと(TAKANABE PEOPLE)

2／18

高鍋の気になるアノ人を不定期紹介するページです

■NPO法人　十次のおやつ　図師いくみさん
月に2回、町の本屋さんが百人を超える子どもたちの笑顔とあいさつで賑わう日があります。子どもたちのお目当ては、店の一角に設けられた色とりどりの駄菓子が並ぶ屋台。
ここは挨拶するとお菓子がもらえる、魔法の駄菓子屋さんです。

十次のおやつは、高鍋町で活動するボランティア団体です。子どもがおやつをほおばる楽しい時間を作ろうと、図師さんが発起人となって2023年5月に活動を始めました。
十次のおやつが運営する駄菓子屋は、普通のお店とは違う仕組みで買い物をします。ここを訪れた子どもは、まず店先で元気な挨拶をします。するとコインが1枚渡され、ガチャガチャを回せます。出てくるのは100円と書かれた1枚のチケット。運が良ければ、2枚入っています。このチケットに書かれた金額の分だけ、子どもたちはお菓子をとることができます。
十次のおやつでは、子どもたちはおこづかいがなくてもおやつを食べられます。このお菓子の購入費用や活動資金は、この活動に賛同する地域の方々からの寄付でまかなわれています。

Q.活動を始めたきっかけは?
子育てする中で、ふとこの子が大きくなったときに、みんなが楽しめる場所があったら素敵だな、それが地域で支えあえる場だったらもっといいなと思ったのが始まりでした。
団体名は、高鍋の偉人である石井十次先生の満腹主義ともつながる目的がある活動だからと「十次のおやつ」にしました。「十」という文字の形に、子どもたちにとってプラスの時間になってほしい、という希望も込めています。

Q.反響はどうですか?
始めた当初、来てくれたのは50人くらいでしたが、少しずつ活動のことが広まって、今では100人を超えるようになりました。
子どもたちはお菓子の値札を見て自分で計算して買い物をするんですが、「これとこれで50円だから…」と上手にやりくりしています。一緒に来ていたお母さんからは「子どもの目がすごいキラキラしている」と嬉しい言葉をいただくこともあります。

Q.おやつ代はどのようにまかなっているんでしょうか
現在は活動を支援してくれるお店に置いている募金箱や、地域の方々からの寄付が活動資金になっています。あとは、アルミ缶を集めて売ったり(笑)
立ち上げた当初はメンバーによる手出しで何とかしていたんですが、徐々に色んな方からの協力をいただけるようになって、今は上手く回り始めてきているところです。
こういう取り組みでは、お金の大切さを分かってもらうために少額でもお金をとった方がいいという意見もあります。でも、大人の協力でなんとかなっているうちは、子どもたちからはとらなくてもいいかなと。その代わり、お金じゃなくても何かを対価としてもらうようにした方がいいなと考えて、「あなたの挨拶がお菓子に変わりますよ」という形にしました。
初めはもじもじしていた子も、今では自分から大きな声で「こんにちは!」と挨拶してくれるようになり、コインを渡すと「ありがとうございます」と感謝の言葉も。そこから「今日は学校どんげやった?」と会話のラリーが続くこともあって、挨拶から変わっていくのを感じますね。

Q.お店のレジやガチャガチャの補充を子どもたちが手伝ってくれているんですね
初めの頃、子どもたちは会計が済んだら帰っていたんですが、いつの頃からか、お店の後ろの席でおしゃべりしたり遊んだりして過ごす子が出てきたんです。お店のことをしながら合間に話しかけているうちに、その子たちが「じゃあ手伝いに来るわ」と自分から言ってくれて。外での呼び込みとか、まだ計算ができない小さい子のお手伝いとか、自分から仕事を見つけて動いてくれるんです。みんな楽しんでやってくれて助かります。
この子たちを見ていると、子どもって結構なんでもできるんだ、しかも大人より柔軟で自分で見て考えて動けるんだと感心します。こんな子たちが高鍋町にいるんだと思うと、これからの未来がワクワクします(笑)

Q.今後の活動について教えてください
十次のおやつは、みんなの心が満たされ、自然と笑顔の溢れる場所になることが願いです。そのために継続運営していける地域ネットワークを築いていきたいです。
また、ここは子どもたちにとって、先生という「タテの関係」や友達のような「ヨコの関係」とは違った、地域のおじちゃん・おばちゃんのような「ナナメの関係」との出会いの場でもあります。この関係をきっかけに、気軽に相談できる地域の先輩の役割も担っていけたらと思います。

「十次のおやつは毎月2回、TSUTAYAたかなべ店で実施されています。(町内のイベントに出店することもあります)
開催日や活動の様子はInstagramをご覧ください。」