■前立腺がん
泌尿器科
主任部長 一松 啓介
◇『前立腺がん』
前立腺は、膀胱と尿道の間に位置しており、精液の一部を産生する、男性だけにある小さな臓器(クルミ位の大きさ)です。近年日本では、前立腺がんの罹患率が上昇しています。国立がん研究センターによるがん罹患数予測(2022年推計)では、男性がんの第1位となっています。
早期の前立腺がんは、多くの場合自覚症状がありません。しかし、進行すると尿が出にくい、排尿の回数が多いなどの症状が出ることもあります。また骨に転移しやすい特徴を持っており、腰痛などで発見されることもあります。患者さんのほとんどは50歳以上で、進行は比較的ゆるやかなことが多いです。
◇『PSA検査』
前立腺がんを早く見つけるためには、「PSA検査」を受けることが大切です。前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAを測定(1cc程度の採血)し、値が4以上の場合は精密検査が必要です。50歳以上の男性なら、一度はPSA検診を受けることをお勧めします。
◇『治療』
転移のない前立腺がんには、手術、もしくは放射線治療が行われます。転移のある前立腺がんにはホルモン治療が行われます。悪性度が低く、がんも小さい場合には積極的な治療を行わず、経過観察とすることもあります。
◇『ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術』
現在、前立腺がんの手術のほとんどは、ロボットを用いて行われています。ロボット手術と言っても、ロボットが自動で行う手術ではありません。あくまでも、人間が行う「腹腔鏡手術」を、より安全で精度を高めるために補助をする道具です。「ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術」では、腹部に穴を6カ所あけます。術者は、サージョンコンソールと呼ばれるロボットを操作する台に座って手術を行います。患者さんの体内に入る内視鏡と鉗子(かんし)は、ペイシェントカートと呼ばれる装置に接続されます。ロボットを介することで、自分の手首や指の関節を曲げるように、自由に鉗子(かんし)を動かすことができます。また、ロボットが手振れ補正をしてくれるので、より精密な操作が可能です。当院で行った実際の手術風景ですが、患者さんから少し離れたサージョンコンソールに座って、術者が操作を行っています。
ロボット手術では、出血が少ないこと(通常100cc以下で輸血不要)、入院期間が短いこと(術後1週間)、術後に通常みられる尿失禁が早く改善すること、などがメリットとしてあげられます。
◇『ホルモン療法』
前立腺がんの進行には男性ホルモンの影響が極めて大きく、男性ホルモンの作用を遮断することにより前立腺がんの増殖を抑制することができます。一般的には、男性ホルモンを抑える注射を定期的に行います。初回ホルモン療法は前立腺がんに対して極めて有効です。
しかし、手術治療や放射線治療のように前立腺がんを根治することは困難で、数年で効果はなくなります。ホルモン療法は主に転移がある前立腺がんの治療に行われます。
ホルモン療法が効かなくなってきた場合でも、近年、種々の新規治療薬が開発され、使用されています。これらの薬を使うことで、転移のある前立腺がんでも、元気に長期生存されている方がたくさんおられます。
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