■脳梗塞の治療
脳神経外科
主任部長 増岡 徹
脳梗塞とは、脳に栄養を送る血管が何らかの原因で閉塞し、その血管が支配していた脳細胞が壊れることにより、運動麻痺や感覚障害などの様々な症状を来す病気です。昔は、脳出血・脳梗塞をあわせた脳卒中が、日本人の死亡原因の1位でした。現在、様々な薬や外科治療の進歩のおかげで、脳卒中は、がん、心臓病、老衰に続く4位の死因となり、その順位を下げています。しかし、亡くなられる患者数が減少しただけで、高齢化や食事の欧米化などに伴い、脳卒中に罹患される方々の人数は増加しており、半身麻痺や寝たきりなどの後遺症で苦しまれている方々も年々増加しています。
不幸にして脳梗塞を発症してしまった場合には、一刻も早く治療を開始することが大切です。脳細胞に栄養を送る血管が閉塞し、脳細胞が完全に壊れるには数時間かかります。脳細胞が壊れる前、すなわち、数時間以内に閉塞した脳血管を再開通させることができれば、脳梗塞にならなくて済むというわけです。
2005年よりt-PA(アルテプラーゼ)という新薬が、日本でも認可されました。t-PAは、今までの薬以上に血栓を溶解する作用が強い薬です。しかしながら諸刃の刃という言葉があるように、血栓を溶解させる作用が強いということは、逆に副作用として、出血を起こす危険性もあります。そのために、t-PAを使用する際には、多数のチェック項目があり、脳梗塞に罹患された患者それぞれに禁忌事項、慎重投与事項がないか確認して、一定の使用基準を満たした方々にのみ治療を行うことが許されています。その中でも、最も重要なチェック項目は、頭部CT上、新鮮な脳梗塞がなく、発症より4・5時間以内に投与を開始しなければならないという項目です。また、たとえ治療を行っても、血管を再開通できる割合は約30%程度でした。このため、最新の治療として、t-PA治療後、足の付け根より、カテーテルを挿入し、閉塞した脳の血管に運び、閉塞した血栓を直接ステントに絡めて吸引除去する血管内治療が推奨されることとなりました。この血栓回収術により、さらに閉塞血管の再開通率が上がり、脳梗塞に至る割合も減少しました。
また、血栓回収術は4・5時間の縛りがなく、MRIなどにて広範囲の脳梗塞を来していないと確認できた場合、行うことも可能です。当院には、脳神経外科4人が常勤しており、24時間CT、MRIの撮影が可能です。皆さんも、もし何か自覚症状が出た場合は、早急に来院してください。
もちろん、脳梗塞は、高血圧、糖尿病、高脂血症、不整脈、喫煙などの様々な危険因子が絡み合った結果、発症する病気です。脳梗塞になってからでは遅く、脳梗塞にならないように普段から、食事、運動、生活習慣に気をつけていただくことが大変重要となります。
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