■糖尿病と合併症について
糖尿病の患者数は年々増え続けており、糖尿病と境界型糖尿病、いわゆる糖尿病予備群の患者数を合わせると約2千万人に達しています。これは40歳以上の成人、5人に1人に相当すると言われています。
高血糖による症状としては、喉が渇き水分をたくさん飲む、トイレが近く尿の量が増えるなどがあります。糖尿病は歴史的に古い時代から知られており、平安時代の代表的な人物として語られる藤原道長やその一族も糖尿病を患っていたと言われています。患者は大量の水を欲しながら苦しんだことから、当時は「飲水病」とも言われていました。
糖尿病による合併症の症状としては、足のしびれ、体のむくみ、目のかすみなどが代表的です。しかし、これらの症状は糖尿病がかなり進行したときに起こることが多く、糖尿病の初期は無症状であることがほとんどです。自覚症状がないからといって高血糖の状態を放置しておくと、全身の血管や神経に障害が起こり、合併症を発症します。
糖尿病の合併症で最も多いのが三大合併症と言われる網膜症、腎症、神経障害です。これらは高血糖によって目の網膜や腎臓の細い血管、神経が障害されて起こります。神経障害による足の壊疽(えそ)や切断のほか、網膜症による失明、腎症による人工透析導入が増えています。網膜症は中途失明の原因の第2位、腎症は人工透析導入の第1位を占めています。
三大合併症は糖尿病発症後、5年から10年の経過で発症すると言われています。一般的には神経障害、網膜症、腎症の順で起こると言われていますが、個人の体質や生活習慣によっても発症の順番は異なります。
一方、心筋梗塞や狭心症、脳卒中などの原因となる動脈硬化は、糖尿病予備群の時期からすでに進んでいると言われています。糖尿病の合併症は自覚症状がなくても検査異常が進んでいることがあり、定期的な検査を受けることがとても大切です。
〔岩国市医師会〕
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