■心臓弁膜症(2)
心臓には、血液が効率的に送り出されて逆流しないように、大動脈弁や僧帽(そうぼう)弁、肺動脈弁、三尖(さんせん)弁の4つの弁があります。それぞれの弁に障害が起こると、弁の通過障害(狭窄(きょうさく)症)、あるいは弁の逆流(閉鎖不全症)といった弁の機能不全が生じます。こうした弁の機能不全により、血行動態に異常が生じた状態を「心臓弁膜症」と呼びます。心臓弁膜症が重症になると、心臓の働きに悪影響を及ぼして「心不全」という状態を引き起こします。
心臓の4つの弁にはいずれも異常が生じることがあり、特に多い心臓弁膜症の種類として、(1)大動脈弁狭窄症、(2)僧帽弁閉鎖不全症、(3)大動脈弁閉鎖不全症、(4)僧帽弁狭窄症があります。今回から複数回にわたりその症状や治療法について、紹介していきます。
(1)大動脈弁狭窄症は、高齢化社会とともに増加している心臓弁膜症です。70歳を過ぎて心雑音があると言われたら、考えるべき疾患の一つで、大動脈弁が開かなくなり、十分な血液を送り出すことができなくなります。またその分、左室の圧が高くなり、心臓は肥大し、心臓の働きは低下します。病気が進行して症状が出現するようになると、突然亡くなることもあり、このような場合は早急に手術が必要です。
(1)大動脈弁狭窄症の原因は動脈硬化と同じように大動脈弁が硬くなって、癒着し、開放が制限されることで起こることが多くなっています。したがって、動脈硬化を合併した高齢者では、特に注意が必要です。生まれつき大動脈二尖(にせん)弁があると、若い人でも大動脈弁狭窄症になることがあります。
(1)大動脈弁狭窄症の症状としては、心臓の圧が高まるために肺に負担がかかり、息切れや呼吸困難を生じます。心臓から出ていく血流が少なくなるために、脳の血流も低下し、めまいや失神を起こすこともあります。また高度な左室肥大や同時に起こる冠動脈狭窄で、階段を上ったときや走ったときに狭心痛(きょうしんつう)(胸の痛み)を生じます。重症例では稀ですが突然死の危険もあります。
次回は、(1)大動脈弁狭窄症の治療法と(2)僧帽弁閉鎖不全症について紹介します。
〔岩国市医師会〕
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