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自治体の皆さまへ

奏であう人 ボリューム73

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山形県 クリエイティブ・コモンズ

撮影場所:鮭川村エコパーク(鮭川村)

■キーワード 山形の豊かな自然の価値を再発見
山形の新たな冬の遊びとして「雪板」の普及に取り組む丸山晃俊さんと、自然のなかで子どもたちの自由な創造力を育む活動「カムイキッズ」を展開するラーワー・フレデリックさんに、山形の豊かな自然の価値と可能性についてお話をお聞きしました。

▼丸山晃俊(まるやまこうしゅん)さん(高畠町)
1980年生まれ。宮城県出身、高畠町在住。天台宗明学院の住職を務める一方、子どもたちに、厳しい北国の冬が宝の山に変わるような、原体験にも似た感覚を味わってほしいとの思いから新たな冬の遊び「雪板」の体験イベントなどを開催している。また、自らも雪板ブランド「ブッダブランク」を立ち上げ、こだわりの雪板づくりにも取り組んでいる。

写真キャプション:雪上のサーフィンとも呼ばれる雪板は、専用の靴はいらず、長靴やブーツを履いて板の上に乗り、足を固定せずに滑るシンプルなもの。雪があればどこでも滑ることができる楽しさを伝えようと定期的に体験イベントを開催している。

▼ラーワー・フレデリックさん(鮭川村)
1984年生まれ。米国出身、鮭川村在住。ウィスコンシン大学で、日本語および東アジア文化の学士号を取得。来日後は首都圏で生活するも、2019年に家族で鮭川村へと移住。「自然の中で子育てができる鮭川村は理想郷」との思いから「カムイキッズ」を設立。子どもたちが自然を相手に自由にのびのびと遊んで学ぶプログラムを提供している。

写真キャプション:現在、月2回行っているカムイキッズの自然体験活動「森のようちえん」。森や川などさまざまな自然のフィールドを使い、自然環境を先生としたアクティビティを展開している。「子どもたちの独創性に任せましょう」を合言葉とし、活動中。

◇自然の中に価値を見出しスタートした二人の活動
サーフボードのような形の板に乗って雪山を滑る「雪板」の普及に取り組む丸山さんは、その活動の原点を次のように話します。
「私は幼少期に宮城県の山間に住んでいて、冬は山でスキー、夏は晴れたら川遊び、雨なら山で拾った木を削ってルアー作りと、毎日、自然を相手に遊ぶことが好きでした。そのおかげで、学校でつらいことがあったときも、大人になって一時自然から離れて暮らしていたときも、いつも自然が私の心のよりどころになったと感じます」。
その経験から、丸山さんは、雪板遊びの体験イベントをはじめ、夏のキャンプ体験など自然の楽しさを伝える活動をしています。
一方、家族で鮭川村に移住したフレデリック(愛称フレッド)さんも、鮭川村で子どもたちが自由でのびのびと遊べる野外教育「カムイキッズ」を展開しています。その活動のきっかけは、現代の子どもたちを取り巻く環境への疑問だったと言います。
「子どもは本来遊びの天才なのですが、今の子どもたちは、放課後や休日も勉強や習いごとで忙しく、自由に遊ぶ時間が少ないように感じます。カムイキッズでは、活動の目標を決めず、子どもたちを自然のなかで自由に遊ばせます。ある子どもは、石を投げて偶然何かに当たったので、仲間と石あてゲームを始めました。自分たちでルールを決めて、ゼロから遊びを発明することは、子どもたちの創造性を高める大切な経験だと思います」。

◇自然の中での遊びが教えてくれること
東日本大震災以後、福島県の子どもたちを置賜へ招いて外遊びの支援をしていた丸山さんは、子どもたちの冬の遊びを探すなかで「雪板」に出会ったと言います。
「雪板は、自分のボードを持って斜面を登り、滑って遊ぶシンプルな遊びです。そして、初心者も上級者も同じように転びます(笑)。ですが、そこが大事で、転んで失敗しても、次に少し長く滑ることができたら成功です。失敗と成功を繰り返し、成功体験を重ねられる雪板は、子どもたちにとって最高の遊びになると確信したのです」。
フレッドさんは、丸山さんが作った雪板を手にして話します。
「雪板はいいですよね。失敗から学ぶことがたくさんあります。夢中になって遊び、失敗してもまたチャレンジする、そんな経験が、心を折れにくく、しなやかに育ててくれるように思います。
カムイキッズでキャンプをしたときに、ある子どもが夜中に朝だと勘違いして目を覚まし、みんなを起こしてしまったんです。大人は“まだ夜だから寝なさい”と叱ってしまいそうですが、そうはせず、暗闇の探検やカードゲームをして遊ぶことにしました。そのとき、みんなで共有した楽しい思い出は、子どもたちにとって一生の宝物です。ハプニングのなかから、得るものもあるのです」。丸山さんが、共感して応えます。
「人がそんな経験をできるのは幼少期だけです。大人は子どもの考えを尊重し、そっと見守る姿勢が大切なのではないでしょうか」。

◇山形は自然の宝庫そのアドバンテージを生かして
フレッドさんは、大人にも自然体験をしてほしいと話します。
「最後にぼうっと雲を眺めたのは、いつでしたか。自分の心の声が、聞こえていますか。大人も毎日忙しく、仕事のストレスも大変です。そんなとき、近くの山を歩いてリフレッシュしてみるのはどうでしょうか。きっと、自分と向き合い、自分を見つめ直す機会になります」。
丸山さんがうなずいて応えます。
「自然から離れた時点で人間の不幸ははじまるというインディアンの言葉があります。山形には、すぐ身近に豊かな自然があり、家の外に出れば星も見えます。自然体験の楽しさは、やってみればわかります。フレッドも、今度一緒に雪板を楽しみましょう!」
丸山さんの呼びかけに「もちろんだよ!」と応えるフレッドさん。お二人の目は生き生きと輝いています。

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