撮影場所:上山城郷土資料館(上山市)
キーワード:郷土の文化を守り、未来へとつなげる
奇習として知られる上山市民俗行事「加勢鳥」の保存会に所属する鈴木崚真さんと、ユネスコ無形文化遺産に登録された「新庄まつり」の山車(やたい)製作を行う髙橋拓磨さんに、郷土の文化である祭りや行事に携わる魅力についてお聞きしました。
■鈴木 崚真(すずき りょうま)さん(上山市)
1998年生まれ。上山市出身、同市在住。高校時代に地域のボランティアサークル・ジュニアリーダーあすなろに所属したことをきっかけに、高校卒業後も地域とのつながりを持ち続けたいとの思いから、「加勢鳥保存会」に所属。若手会員として、行事の運営に携わるとともに、加勢鳥の演者として活躍している。
写真キャプション:カッカッカーの掛け声とともに、藁蓑(わらみの)でつくられたケンダイをかぶり、踊りながら市内を練り歩く加勢鳥。沿道からは、五穀豊穣、商売繁盛、火の用心を祈り「祝い水」がかけられる。ケンダイから抜け落ちた藁は縁起物。その藁で女児の髪を結うと黒髪の豊かな美人になるといわれている。
■髙橋 拓磨(たかはし たくま)さん(新庄市)
1987年生まれ。新庄市出身、同市在住。幼少期に、父が山車を製作する姿を見て、「北町若連」に憧れを持つ。県外へ就職したことで一時地元を離れるものの、その後、新庄市へのUターンを機に北町若連に参加する。北町若連の山車製作では、絵付けを担当するとともに、後輩の指導にも力を入れている。
写真キャプション:新庄まつりで各町内が華やかさと卓越した技を競い合う山車。各町内の有志で組織される若連20団体が、能や歌舞伎、伝説などから題材を選び、山車を製作する。髙橋さんが所属する北町若連では、毎年6月から製作を本格化し、ほぼ毎日のように仕事が終わった後に集まって作業をするという。
◇郷土の文化は次代につなぐべき財産
高校時代にボランティアサークルへ所属した鈴木さんは、活動をする中で、地元が大好きになったと言います。
「高校を卒業後、地域のためにできることを探して見つけたのが加勢鳥保存会です。奇習として知られる加勢鳥は、江戸時代に生まれ、その後一度は途絶えましたが、市民の強い思いによって復活しました。保存会は、加勢鳥という地域の文化を守り、次代につなぐための組織。私も一助になりたいと参加しました」。
以来、加勢鳥の演者として、また行事の運営にも携わっています。
「加勢鳥になって練り歩いていると、観客が後ろをついてきて一緒にカッカッカーと歌ってくれたりします。観客と一緒に、加勢鳥という行事を作り上げる感覚に、喜びを感じます」。
それはまるで音楽のセッションみたいですね、と談笑する二人。
一方、夏の風物詩である新庄まつりで、北町若連(きたまちわかれん)の山車(やたい)を製作する髙橋さんは、子どもの頃から祭りが身近にあったと言います。
「父が山車を製作する姿を見て、いつか私も作りたいと思っていました。新庄まつりは、私たちの魂とも呼ぶべき、かけがえのない文化です。祭りでは、子どもにも山車の引手などの役割があり、大人も子どももみんなで祭りを盛り上げます」。
山車の製作が本格化する6月以降は、ほぼ毎日仕事が終わってから作業をすると言います。
「作り手はみんな素人で、先輩から技を教えてもらいながら作っていきます。完成は祭り当日の朝、なんてこともありました。最優秀賞の山車を除けば、山車は祭りの後すぐに解体されます。そんな儚さがあるからこそ、みんなで山車を作り上げた喜びや、祭りに出た山車の輝きが深く心に残ります」。
◇郷土の文化を未来へと残すために
髙橋さんが言葉を続けます。
「小学校では、小さな山車の製作やお囃子の練習をしており、子どもが新庄まつりへの愛着や憧れを持つきっかけになっていると思います。一方で、進学や就職などで市外に出る若者が多く、山車の製作に関わる人が少なくなってきました。地域の枠に捉われず、祭りに関わってくれる仲間を見つける必要があります」。
髙橋さんの言葉に鈴木さんが応えます。
「加勢鳥の演者は、一般参加者を募っています。県内外から申し込みが増え、中には外国人の参加者もいて驚いています。今後、加勢鳥保存会の会員を増やしていくためにも、SNSを使って魅力を広く発信するとともに、新庄まつりに関する小学校の取組みのように、子どもたちに郷土の文化の魅力をしっかりと伝えていくことも大切です」。
「祭りは大人から子どもまでみんなで交流できる唯一の場。これからも盛り上げていきましょう。」と話す髙橋さんに、鈴木さんが応えます。
「お互いの活動が、少子高齢化で悩む各地の祭りや行事の担い手を勇気づけるものでありたいですね」。
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