撮影協力:1Blue株式会社(鶴岡市)
キーワード:新たな視点で見つめる、県産食材の可能性
庄内柿を主原料とした「エナジーバー」を開発したリップス・デイビットさんと、県産食材を使用したアレルギー対応のレトルト離乳食を開発した浅野佳織さんに、県産食材の可能性についてお聞きしました。
■リップス・デイビットさん(鶴岡市)
1991年生まれ。オランダ出身、鶴岡市在住。鶴岡市内のバイオ関連企業への就職を機に、2017年に来日。アウトドアなどで手軽に栄養補給できるエナジーバーが、欧米と比べ日本には少ないことに気づき、エナジーバーの開発を始める。庄内柿の干し柿を使用したエナジーバーを開発し、「SHONAI SPECIAL(ショウナイスペシャル)」の名でネットや小売店での販売を行う。
写真キャプション:庄内柿の干し柿を主原料に、有機栽培の庄内産発芽玄米を練り込んだSHONAI SPECIAL(ショウナイスペシャル)。現代のライフスタイルを踏まえた庄内地域の食材の新しい楽しみ方を提案することで、食材の持続的な生産と消費を促し、生産者との支え合いを図っている。
■浅野佳織(あさのかおり)さん(山形市)
1984年生まれ。山形市出身、同市在住。2020年に起業し、アレルギーを持つ子どもの育児経験から、県産食材を使った、アレルギー対応のレトルト離乳食を開発。食べられるものが限られている乳幼児に、安心で安全、そしておいしい食事を提供したいという考えのもと、こだわりの離乳食を製造し、ネットや小売店での販売を行う。
写真キャプション:有機栽培のつや姫や季節の野菜、庄内浜の新鮮な魚などを使った、レトルトの離乳食。アレルギー28品目不使用のほか、食材を生かしたシンプルな味付けや月齢にあわせた食感など、赤ちゃんに寄り添った製品作りに努めている。製品名の「太陽と月のひかり」は、自身の子どもたちの名前に由来している。
■身近な食材にそれぞれの活路を見つけて
三男が重度の食物アレルギーを発症したことをきっかけに、アレルギー対応のレトルト離乳食の開発を決意した浅野さん。そこには、息子に安全でおいしい食品を食べさせたいとの強い思いがあったと言います。
「子育てをしながら、三男のアレルギーに対応した離乳食を作るのには苦労しました。市販の離乳食に頼りたいと思う時もありましたが、添加物や産地がわからない原材料に不安を感じました。生産者の顔が見え、シンプルでおいしい離乳食が欲しいのに、そんな製品がなかったのです。同じ思いの方が私の他にもきっといると思い、ならば、私が作ろうと一念発起しました」。
浅野さんは、ゼロから食品製造の勉強を重ね、有機栽培に取り組む県内農家を訪ね歩き、製品を完成させました。
「全国各地から注文があり、山形が生み出す農産物のおいしさが評価につながっていると思います」。
デイビットさんが言葉をつなぎます。
「私は、オランダに住んでいた頃から、毎日食べたいほどエナジーバーが大好きでしたが、日本には欲しい製品が流通しておらず、困っていました。エナジーバーは、ドライフルーツやナッツ、穀物などを原材料にした棒状の携行食です。私も、日本にないなら自分で作ろうと開発を始めました」。
自然の原材料から作るエナジーバーの多くは、ベースに乾燥したデーツを使用しますが、柿農家の友人からの提案で、代わりに庄内柿の干し柿を使ってみたそうです。
「上質な甘さと適度な粘りがあり、食物繊維が豊富な庄内柿の干し柿は、栄養面と加工面ともにエナジーバーに最適でした」。
“SHONAI SPECIAL(ショウナイスペシャル)”と名づけられたエナジーバーは、東京のナチュラル志向のお店などでも取り扱われ、好評を得ていると言います。
■製品開発を通じて一次産業を盛り上げたい
高齢化や後継者不足を理由に、離農する柿農家を目の当たりにしたデイビットさんは、直接的なサポートをしたいという思いから、人手が必要になる柿の収穫の時期には、スタッフ総出で収穫の手伝いを行っているそうです。
「エナジーバーを通して庄内柿やお米などの農産物の消費を増やすことができれば、地域の農業を盛り上げることにもつながります。」と話すデイビットさんに、浅野さんが共感して応えます。
「お互いの製品を世に広めることは、原材料となるお米や野菜、果物などの生産者の情熱を、多くの人に伝えることにもつながると思います。県内には情熱を持った農家さんがたくさんいるので手を取り合いながら、山形ならではの価値を広く発信していきたいです」。
「それには、生産の現場に行ってみることが大切ですよね。それに、自然の中でする仕事はとてもいい感じ(笑)。」とデイビットさん。
“こんな製品が欲しい”から始まったお二人の開発ストーリーは、県産食材の大きな可能性を教えてくれます。
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