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農地の基盤整備って何だろう?(1)

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山形県大蔵村

~「夢のある農業」を目指して~
「キバンセイビ」と聞いて、どんなものだと想像しますか?農地を持たない人にはなかなか縁遠いこと。今月は大蔵村内の農地の基盤整備について、どんなことをしているのか、どんな人たちが仕事に従事しているのかをご紹介します。

○「基盤整備」とは
農業は大蔵村の基幹産業であり、田んぼや農道、水路といった稲作の風景は村内のいたるところで目にすることが出来ます。その多くは藩政期から明治期の開墾開田事業によって築かれ、生活の中心、生業の場として今日まで受け継がれてきました。しかし農作業の機械化が一般的となった現代においてはこうした田んぼは不整形で狭いものとなり、手間がかかり条件が不利な農地となっています。「基盤整備」とは農地の条件を改善するために「ほ場(農作物を生産する場所のこと。水田や畑の総称)」の区画や形状、機能の整備を行うことを言います。

○基盤整備の効果
基盤整備により、具体的にはどんな効果が得られるのでしょうか。
まず、狭く、いびつな形をしていた田を、大きな区画に広くまとめて形を整えることにより、大型の農業機械を利用することが作業の大幅な効率化を可能にします。人の「労働生産性」と、ほ場そのものの「土地生産性」が向上することで、効率的な農作業が可能となり、農業所得の増加にもつなげることができるのです。分散していた多くの農地を集積し、ほ場の大区画化による農業経営を強化することができます。
また一枚の田を広くするだけでなく、そこに走る農道も幅が広くなります。同時に用水路、排水路の整備も行うため、必要な水が安定して利用できるうえに、水はけのよい農地を造ることができます。その結果、
・生産性が向上
・生産可能な作物品種の増加
など、多くの効果が見込まれ、さらに、農業を担う農業者(担い手農業者)の育成にも大きく貢献する仕組みといえます。

○基盤整備のその先に
地域では、基盤整備によりそれまでの制約や条件不利が解消され、より多様で高度な営農に取り組むことが可能になります。時間の余裕ができ、そこで推奨されているのが高収益作物(トマト、ねぎ、ピーマンなど)の栽培です。しかし基盤整備の効果を最大限に発揮するためには、基盤整備されたほ場でどのような営農を行っていくのかということについて農家非農家を問わず地域ぐるみでの話し合いを重ねていくことが何よりも重要です。

◆令和3年度完成 赤松通り・烏川赤松地区
○元気な農業の復興を目指して
赤松地区、烏川地区は村の北東部に位置し、銅山川、赤松川を水源としています。この地区は、川の周辺に広がる標高40~60メートルの中山間地域に位置しています(役場の標高は43メートル)。農地は水稲を主体として、ほかに飼料用作物の営農が行われていますが、以前は水田の排水に障害があり、課題となっていました。また農業従事者の高齢化や減少から作付けのできない農地の拡大が懸念されていました。
地域農業の存続が危ぶまれる中、地区では山形県の支援による住民参加型のワークショップなどを経て基盤整備による問題解決の構想を具体化させていきました。
地元関係者による事業推進体制として、平成21年に「赤松通り地区基盤整備委員会」が、平成24年には「烏川赤松地区基盤整備委員会」が設立されると、それぞれ3年間の調査計画期間を経て事業採択を受けると、基盤整備事業が実施され、令和3年に完成しました。
この事業の実施によって、不整形で狭かったほ場が大区画化され、地区内の約3割が1ヘクタール、約5割が50アールほどの規模に整備されました。加えて用排水を管水路化し、大型機械の導入も進んだため作業効率が向上しました。それまで苦労していた水路の草刈りや土砂上げ作業、用水の管理も省力化することに成功し、水稲と高収益作物どちらにも適した環境を整備することができました。

○農業の法人化へ
基盤整備事業が行われるまでは家族経営での農業が主となり、分散した農地では作業効率も上がらず農業所得が低迷していました。また高齢農家が農地を手放そうにも受け手となる経営体がいない状態が続いていました。
そこで、集積化された農地で農業を担う仕組みづくりのため、地域での農業の法人化が進められたのです。事業をきっかけにして地区内には「農事組合法人グリーンライスファーム」、「農事組合法人このこのファーム」、「烏川農事組合法人」の3つの農事組合法人が設立され、これにより、効率的な営農環境の向上(法人への農用地の集積・集約化)を実現しました。農地中間管理機構と連携して農地の集積、集約を進めたことで、担い手への集積率は令和4年まででは71.5%に達しています。
水田の汎用化(特定の対象以外の用途でも使用できるように機能を拡張すること)と農地の集約が進んだことで、高収益作物への転換も加速しました。高収益が見込める作物として、施設園芸作物として村やJAが支援するトマトを選択し、基盤整備と併せてトマトのビニールハウスを団地化。事業開始前の平成24年には1.4ヘクタールだった作付面積は令和4年には3倍以上の4.4ヘクタールにまで拡大し、大蔵村の特産品としてのトマトの出荷を後押しすることとなりました。

○コンクールで功績が認められる
「令和4年農業農村整備優良地区コンクール」において、この赤松通り・烏川赤松地区での取り組みが認められ、「農業振興部門農村振興局長賞」が贈られました。事業を設立した法人に農地を集約したことを契機に、またトマトハウスの団地化で作付面積が3倍増になったことが評価されました。

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