◆大蔵村土地改良区での活動
○「土地改良区」とは
土地改良区とは、土地改良法の規定に基づき都道府県知事の認可により設立される公法人(公の事務を行うことを目的とする法人)です。全国に4095もの土地改良区があり、山形県内には51か所存在しています。
土地改良事業という公の事務を行うことを目的に設立される法人で、担当する土地改良区の区域で、組合員(原則として農業を営む方)の3分の2以上の同意で土地改良事業(建設及び維持管理)を実施することができます。
また、土地改良区の多くは、土地改良事業により整備された施設、特に農業用の水路の維持管理を行っています。
土地改良区は、土地改良事業による農業水利施設や農地の整備、更には、整備された施設の維持管理を通じ、「国の基である農業」を下支えしています。加えて、農業用のため池や用水路を適切に維持管理することにより、防火用水、生態系の保全、消流雪用水などの多面的な機能(これらの機能に用いられる水は「地域用水」といいます)も発揮しており、農業生産のみならず、良好な農村環境の維持保全にも大きく寄与しています。
○大蔵村土地改良区
大蔵村土地改良区は、赤松通り地区、烏川赤松地区の事業採択やその他地区での基盤整備事業の機運の高まりを受けて、平成27年3月に設立されました。平成31年には白須賀土地改良区、清水堰土地改良区との統合が行われ、村内の平野部の大多数に当たる約350ヘクタールの農地を管轄しながら基盤整備事業の円滑な推進と維持管理体制の強化を担っています。12名の理事が主となり業務の意思決定を行っていますが、令和6年4月からは女性理事も加わり、農業農村分野における男女共同参画の役割も期待されます。
役場の第2庁舎、現在村営バスの待合所がある建物の2階に大蔵村土地改良区の事務所があります。事務所には常時3名の職員が配置されており、村産業振興課と連携しながら基盤整備事業に関する連絡調整、各種手続事務、予算管理、施設の維持管理といった業務を行っています。
自身も野菜を栽培する農家である八鍬俊一さん(烏川)は、大蔵村土地改良区の理事長として、対外的には村や山形県、土地連など関係機関との折衝を行うほか、対内的には理事会の決定に基づく業務の執行や書類の決裁を行うなど多岐にわたる職務にあたっています。
八鍬理事長は「基盤整備を行って、やはり効率は良くなりましたね。一気に大きな機械で作業ができるのは大きな変化でした」と語ります。八鍬理事長自身も基盤整備事業が営農形態を転換する契機となり、農地中間管理事業を活用し農地を農事組合法人に貸付することで営農形態をトマト栽培に集中させることができました。貸し付けた農地の賃料は中間管理機構から毎年支払われる仕組みになっています(下記参照)
▽農地中管機構を利用した仕組み
◆現在進行中! 白須賀/熊高基盤整備事業
○熊高地区土地改良事業
令和元年度着工~令和8年度完成予定
熊高地区の基盤整備事業は計画の終盤にさしかかっています。令和8年度の事業完了に向け用水排水の管路化や環境へ配慮した水路の設置といった工事が一部残されていますが、既にすべてのほ場で営農が可能な状態となっています。現在は大区画化されたほ場で水稲がしっかりと生育しているほか、高収益作物としてねぎやタラの木の栽培が行われています。
○白須賀地区土地改良事業
令和3年度着工~令和13年度完成予定
白須賀地区では重機を用いたほ場の整備が今年度から本格化しています。従来の区画や畦畔を撤去し一度まっさらな状態にしたのちに、新たな区画を造っていきます。地区には県道や村道、上水道、光ファイバなどの重要施設もあることから調整作業も適宜行われています。
また、令和5年度には二日町地域も地区に編入され地区の受益面積は125.7haと最上管内でも一、二を争う規模となっています。複数年度にわたるほ場の整備や揚水機の改修などが予定されており、令和13年度の事業完了を目指しています。
◆村内他地区への波及効果と今後の展望
現在進行中の基盤整備事業は上記の2地区のほか、清水堰地区、作の巻地区、舟形町と大蔵村とにまたがる三光堰西地区の合計5地区となっており、早期の事業完了を多くの関係者が待ち望んでいます。一方、基盤整備事業はその規模の大きさから総事業費も多額となり、事業期間についてもおよそ8~10年と長期にわたります。この間着実に事業を実施するためには事業主体である山形県や受益者である地元のほか、村や土地改良区その他関係機関などによる推進体制が欠かせません。
現在農業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。最新技術を活用したスマート農業の広がりは様々な課題を解決する糸口になり得ます。異常気象や物価高騰などの厳しい情勢は地域農業を見つめなおす絶好の機会であるともいえます。このような時代の流れを捉えつつそれぞれの地域の特色や強みがされる「夢のある農業」が基盤整備事業を通じて実現するよう期待されます。
先人から受け継いだ大蔵村の豊かな農地を次の世代へとつなぎ、今後も農業が村の基幹産業として持続発展していくため、基盤整備に関わるみなさんひとりひとりの主体的な取り組みがいま求められています。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>