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〔巻頭特集〕変わる富士山(3)

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山梨県

《ここが変わる!3》
ー富士山研究がきめ細かくなるー
昨年6月の「活火山法改正」をきっかけに、今年4月、文部科学省に「火山調査研究推進本部(火山本部)」が設置されました。
火山本部ができると何が変わる?
火山防災の国内第一人者で、山梨県富士山科学研究所所長の藤井敏嗣さんに話を聞きました。

◎藤井敏嗣 Fujii Toshitsugu
山梨県富士山科学研究所所長。東京大学名誉教授。理学博士。1946年生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。ピナツボ火山や雲仙普賢岳、伊豆大島など国内外のさまざまな火山災害調査研究プロジェクトで中心的役割を果たす。2003年から14年間、火山噴火予知連絡会会長を務めた。2014年に富士山科学研究所の所長に就任。

◇活火山法改正で火山本部ができた
私はずっと日本の火山防災を変えるためには、「活火山法を改正する以外にない」と言ってきました。従来は大学などの研究機関が個々に調査・観測したデータを気象庁が集約して火山情報として発信するボトムアップ型だったからです。
火山防災のためには、国が主導して体系だった調査をする専門部署をつくらなくてはいけません。
1995年の阪神淡路大震災で、「地震調査研究推進本部」(当時の総理府に設置、現在は文部科学省)ができたとき、私は「火山も対象にするべきだ」と進言しました。2000年に有珠山と三宅島で噴火が起きたときも、〝防災のための火山研究〟の必要性を主張しましたが、火山本部設置には至らずじまい。「こんな防災体制のままでは大変なことになるぞ」と、本気で焦っていました。
事態が動きだしたのは2019年。富士山に新たな火口が見つかり、避難対象人口が約10万人増えたため、富士山ハザードマップの改定作業が始まりました。
その年に初当選した長崎幸太郎知事が「火山災害警戒地域」に指定されている23都道県に協力を呼びかけ、自らが世話役となって「火山防災強化推進都道県連盟」を設立しました。2022年に自民党火山議連に対して要望書を提出すると、2023年6月14日の国会で活火山法の改正案がスピード可決されました。20年以上できなかったことが、たった4年で達成されたことに驚きました。
この法改正によって「火山調査研究推進本部(火山本部)」が設置されました。これでようやく、国が責任を持って全国の火山の一元的な調査研究を行うトップダウン型に切り替わることになります。地震研究の〝3周遅れ〟の状態だった火山研究が、スタートラインに立った瞬間です。

◇火山本部ができたメリットは?
火山本部が設置された大きなメリットは二つあります。
一つ目は、国から調査研究のための予算が出ることです。いままでは予算が足りず、十分な観測機器の設置ができていませんでした。
特に富士山は日本で一番大きな活火山にもかかわらず、電気が通っていない五合目から上には、ほとんど観測機器がありません。今後は予算がつくことで、きめ細かい調査ができるようになります。
二つ目は、火山本部が司令塔になって、火山調査研究を一元的に推進できるようになることです。
私が委員長を務める「政策委員会」は、観測や調査研究の基本方針や施策を考えます。これまで研究者の負担となっていた、地面に穴を掘って地層を調べる〝トレンチ調査〟などは調査方法をマニュアル化して業者に委託することで、研究者はデータの分析に集中できるようになります。
今年の夏までには総合的な基本施策の要点を固めなければいけません。〝どこに観測機器を設置するか?〟、〝どうすれば効率的な調査ができるか?〟など、考えることが山ほどあって大変ですが、「これからだ!」と気を引き締めているところです。

[新しい火山研究の体制]

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