◇労使共にメリットを
働き手は「スキルアップが賃金の向上につながるのだろうか」、経営層は「従業員のスキルアップが会社の課題解決・成長にどのように生かされるのだろうか」などと、先が見通せないことでスリーアップに取り組むことを躊躇(ちゅうちょ)してしまうかもしれません。そこで県は、働き手に対しては「個々の能力が上がれば企業は賃金を上げてくれますよ。経営者も応援してくれるので安心してください」、経営層に対しては「従業員のスキルアップが事業に生かされるよう支援しますよ。賃上げなどに取り組めば優遇措置も用意していますよ」というように、それぞれの立場からメリットを感じ一歩を踏み出せるよう支援していきます。具体的には、賃金アップを含めたスリーアップに取り組むことを企業に宣言してもらい、その企業に対し、経営に有利な補助金や融資制度を活用できる制度を設けています。
従業員と経営層(労使)が手を取り合い同じ方向を向いて収益アップ・賃金アップに取り組むことも重要であることから、両者が共通の理解を持つ場や、従業員の意見や要望をくみ取る機会を設けることなどにより、労使が共に利益を生みそれを互いに享受する関係(共益関係)の構築を推進しています。
こうした取り組みを足掛かりに、多くの働き手・企業の皆さんにスリーアップの運動に参画いただき、スキルアップが業務に生かされ賃金上昇が実現した事例や、企業の収益増につながった事例を蓄積し周知することで、全県へ波及させていきます。
◇企業や働き手と共に検討重ね
CUU開講に至るまで、県はさまざまな関係者と議論を重ねてきました。
労働団体、経済団体、教育機関などが一堂に会する「豊かさ共創会議」を令和4年5月に設置し、出席者からの意見を踏まえ翌年3月にリスキリング拠点を整備する方針や課題に対する具体的なアクションを盛り込んだ「キャリアアップ・ユニバーシティ構想」を策定しました。
令和5年度には「豊かさ共創フォーラム」と「豊かさ共創スリーアップ推進協議会」を設置。フォーラムは、県内企業・団体や有識者で構成され、CUUの運営方針を決定するほか、働き手の能力開発の方向性と環境づくりをデザインしていきます。推進協議会は、県内企業が主体の組織で、スリーアップを普及していくとともに、参画企業間の情報共有・交流を促します。フォーラムへ提言を行うため、各企業の意見を集約する役割も担います。昨年10月に17社からスタートした推進協議会は、現在200を超える企業が参加しています。
フォーラムと推進協議会はお互いの状況を共有し、構想の実現という共通の目的に向け取り組んでいきます。実行段階の当初は、CUUの講座やカリキュラムなどの充実と、スリーアップ推進宣言を行う企業の増加を図ります。将来的には、CUUを土台にスリーアップを循環させていくことが県内企業にとって当たり前・常識となり、自らの意思でリスキリング、収益向上、賃金上昇を生み出そうと事業戦略を練り実行していく企業が多数出現する社会を目指していきます。
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