■未来の農業
追求するのはおいしさだけではありません。
やまなしの農業は、地球環境に優しく、最先端テクノロジーも活用して未来に羽ばたきます。
◆やまなしカーボンフリー農業 実現への一歩を踏み出す
山梨県はブドウとモモ、スモモの生産量が日本一を誇ります。すでに、県内の果樹園では「4パーミル・イニシアチブ※」による栽培を通じて、地球温暖化の抑制に取り組んでいます。地球の未来を見据えた環境に優しい農業へと歩みを進めるため、県は、二酸化炭素を排出しない「やまなしカーボンフリー農業モデル」の実現を目指していきます。
「カーボンフリー農業」には、再生可能エネルギーを活用します。
JAや農家が太陽光で発電した電力により甲府市の米倉山電力貯蔵技術研究サイトでグリーン水素※を生産、これを燃料とする「水素加温機」の開発に着手します。農業用ハウスでの活用に向けメーカーとの共同研究に乗り出し、来年度にも実証試験に入る予定です。
農業用のハウスでは重油を燃焼するのが一般的ですが、グリーン水素に置き換えることにより、ここで栽培されたブドウやモモを「カーボンフリー・フルーツ」として消費者にアピールすることを狙います。
また、農家が自家発電した電力を利用した農機などの電動化も検討しています。そこで、県果樹試験場(山梨市)などにEV軽トラックやEV農機を導入して作業効率や操作性を検証します。検証結果を踏まえて農家へ普及し、農業分野でのカーボンフリー化を推進します。
※4パーミル・イニシアチブ
世界の土壌の表層(30〜40cm)の炭素量を年間0.4%(4パーミル)増加させれば、人間の経済活動によって増加する大気中の二酸化炭素(CO2)を実質ゼロにすることができる、という考え方に基づく国際的な取り組み。県内では果樹の剪定枝を炭にして微生物などによる分解がされにくくした上で畑にまき、半永久的に炭素を土壌中に留めるなどの取り組みをしています。
※グリーン水素
再生可能エネルギーを使い、製造過程でCO2を一切出さずにつくられた水素のこと。究極のクリーンエネルギーといわれています。
◆高校生が「匠の技」を体験!スマートグラスを使った最先端農業
北杜高校の果樹圃(ほ)場に集まったのは、10人の総合学科3年生です。代わるがわる、スマートグラス(メガネ型コンピューター)をかけて、生育中のシャインマスカットを眺めています。グラス越しに房を見ると、摘粒するべき粒とその数が示され、誰でも簡単に房の形を整えることができる仕組みです。
体験した生徒は、「こんなことが本当にできるんだと驚きました。AI技術を活用した取り組みが、他にもできそうだと想像が広がります」と話していました。
山梨県では2020(令和2)年度から、産官学連携による「スマート農業実証プロジェクト(5G)」が行われています。この取り組みの中で、山梨県果樹試験場の研究員がシャインマスカットを摘粒する様子を「匠の技」としてAI学習させ、それを基に、作業をサポートする技術が県内の企業や大学によって開発されました。
スマートグラスのカメラで読み込んだ作業者目線の画像データは、いったん山梨大学の研究室のサーバーで情報処理されます。するとAIが学習済みの「匠の技」を基に、「この粒を摘みなさい」という指示をスマートグラスに送り返します。これによって、熟練者と同じように作業を進めることができます。
◇「匠の技」を伝えるツールに
ブドウの房の形を整える摘粒などの作業には、長年の経験で培った「匠の技」が必要とされます。しかし、この技術の継承は簡単ではなく、AI技術が大いに役立ちます。
スマートグラスは価格も高く、暑さや雨に弱いため生産現場に普及させることにはハードルがありますが、今後の改良により、新規就農者らに「匠の技」を継承するツールとしての活用が期待されています。
県の担当者は、今回の体験授業について「想像以上の反応でした。『農業には夢がある』と感じてもらい、自分も将来携わりたいと思ってほしい」と手応えを語っています。
進化を続ける技術開発に、これからも目が離せません。
問い合わせ先:農業技術課
【電話】055-223-1616【FAX】055-223-1622
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