◇大学で学び直し
澤登さんには別の仕事も回ってきた。それが外国籍児童への日本語教育だった。軽い気持ちで引き受けたが、難しかった。教科書がないから、どんなことをどう教えたらいいのか分からず、試行錯誤の毎日だった。
そこで、22年4月、大学の通信教育制度を使い、日本語教員養成課程※に入学した。
「大学で学んだ前と後で授業内容はさほど変わっていません。でも、外国の人が理解しやすい日本語文法や、『ら行』が発音しにくい語音など体系的に学びました。教える目的もはっきりしたので、授業づくりが楽しくなりました」
いま澤登さんが心配していることは、外国籍の子どもたちが進学の機会を失ってしまうのではないか、ということだ。山梨県内にはボランティアの日本語教室はある。だが、そこに通う子どもは少ない。
「子どもはすぐに生活言語を体得します。でも、学校での教科学習に必要な学習言語は別のものだということを多くの日本人は気付いていません。学習言語を習得しなければテストの設問を理解することもできず、よい成績をあげられないんです。今後、日本で暮らす外国人は増えていきます。習得に5〜7年はかかる学習言語をしっかり教える仕組みをつくると同時に、私たち日本人社会が外国人との共生をもっと意識していかなくてはなりませんね」
澤登さんは、この仕事を「倒れるまで続けたい」と思っている。
※国家資格「登録日本語教員」は2024年度に創設予定。
◆ここがヒント
山梨県は2021年度、全国初の「小学校25人学級」を始めた。24年度には小学4年まで拡大した。少人数学級にすればクラスが増えて教員数も必要になる。全国的な教員不足の中、県教委は定年を迎えた65歳未満の教諭を再任用したり、教員免許を持つ人を任期付教員として受け入れたりして人材確保を図っている。外国人労働者の増加に伴い、日本語教育の重要性も高まっている。
◆HISTORY
1958 南アルプス市生まれ
1981 大学卒業後、小学校教諭に
2016 南アルプス市立若草小学校の校長(2019退職まで)
2020 再任用。
2024からは任期付教職員として南アルプス市立落合小学校などで外国籍の子どもに日本語と教科を教える
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