◆夜間のトイレ、何回行きますか
山梨大学医学部附属病院 泌尿器科 講師 吉良聡
みなさんは、夜間睡眠中トイレに起きることはありますか。夜間睡眠後に1回以上(起床時は除く)トイレに起きなければいけない症状を、夜間頻尿といい、加齢と共にその頻度が高くなり、日常生活の質を落とす困った症状の1つです。この夜間頻尿は、大きく分けて3つの原因が考えられています。
◯1
【多尿】
1日24時間の尿量が多いため、トイレの回数が多くなり、結果として夜間頻尿になります。1日の尿量が40ミリリットル/kg体重を超える場合(例:体重50kgの人は、40ミリリットル/kgx50kg=2,000ミリリットル)がこの原因となります。
【夜間多尿】
夜間入眠中のみ尿量が多いため、夜間頻尿になります。65歳以上の人で、1日24時間の全尿量に対して夜間睡眠中の尿量の割合が33%を超える場合(例1,500ミリリットル/日とした場合、約500ミリリットルに相当)がこの原因となります。
◯2
【膀胱容量の減少】
膀胱はお腹の下の方にある尿を貯める袋ですが、貯めることができる尿量が少ないと少し尿が貯まるだけですぐに一杯になり、何回もトイレに行かなければならず、夜間頻尿になります。
◯3
【睡眠障害】
眠りが浅くすぐ目が覚めてしまうため、目が覚める度にトイレが気になって夜間頻尿になります。適切に夜間頻尿に対処するために、これらの原因を明らかにすることが大事です。そのために自分で夜間のトイレの際に目盛り付のコップで1回の尿量を計測してみましょう。
(1)毎回十分な尿量である場合(おおよその目安として200~300ミリリットル)
・多尿もしくは夜間多尿による夜間頻尿
(2)十分な尿量でない場合(おおよその目安として100ミリリットル以下)
・膀胱容量減少による夜間頻尿
これらに、睡眠障害が関係してくる場合もあります。
もう少し詳しく、自分の排尿習慣を知りたい場合は、排尿の日記をつけてみましょう。具体的な方法は、朝起床後から翌日の朝起床まで、排尿した時刻と目盛り付のコップで測定した尿量をみなさんは、日記として記録します。(例:7時250ミリリットル、11時200ミリリットル…)これで、1回の排尿量(膀胱に貯めておける尿量、すなわち膀胱容量)と1日(活動時と睡眠時に分けることができます)の排尿回数を知ることができ、おおよその原因を知ることができます。原因が分かった時点で、多尿・夜間多尿が存在する場合には、自分でできる対処法(生活習慣の見直し)があります。1日の水分摂取量の目安を体重の約2%(例:体重50kgの人は、1,000ミリリットル程度)や、1日の尿量を20~25ミリリットル/kg(例:体重50kgの人は、1,000~1,500ミリリットル程度)になるように飲水量を調整しましょう。更に、夕方以降カフェインやアルコールを控えることで、夜間頻尿が1回程度減少することが期待されます。また、1日の塩分摂取量を6g以下にすること、夕方以降の散歩などの適度な運動で夜間頻尿が減少するとされています。ただし、これらをやり過ぎる(例:夏の暑い日に、喉が渇くにも関らず過度に飲水を制限するなど)と脱水症になってしまう、またストレスが溜まって睡眠障害などが起きてしまうと逆効果ですので、ご自身の体調と相談しながら可能な範囲でトライしてみましょう。
ただし、膀胱容量の減少や睡眠障害が存在する場合は、薬物治療等が必要になることが多いため、お近くの泌尿器科にご相談されることをお勧めします。本稿を通じて夜間頻尿に関して、少しでも知って頂ければ幸いです。
企画:一般財団法人 里仁会
<この記事についてアンケートにご協力ください。>