■第2回 観光立村に向け山中湖村が新たに取り組む『ウェルネスツーリズム』についてご紹介します
山中湖村では一昨年から、『ウェルネスツーリズム』という旅行スタイルへの取り組みをはじめました。村民の皆さまへの理解促進を目的として、シリーズでこの取り組みについて紹介しています。
◆山中湖村の取り組み
現在、山中湖村では「ウェルネス」という価値に注目した、『ウェルネスツーリズム』という旅行スタイルに取り組んでいます。村を挙げて『ウェルネスツーリズム』を推し進めていくことで、たくさんの新しいお客様に来村いただく計画を立てています。
この取り組みを村民の皆さまにご理解いただくため、今月も日本の『ウェルネスツーリズム』の第一人者である琉球大学の荒川雅志先生にお話を伺います。
※「ウェルネス」については、「広報やまなかこ1月号」で紹介しています
◆第2回 ウェルネスツーリズムは、いま世界中で注目されています
▽ウェルネスツーリズムの概念
現代のウェルネスツーリズムは、温泉地、保養地、リゾート地での養生やヘルスケアなどを中心に発展してきました。今でも海外におけるウェルネスツーリズムの多くは、「スパツーリズム(温浴、温泉を求めての旅行)」であり、同義語として使われるケースもあります。
こうした発展の歴史や海外での実態は、たしかにウェルネスツーリズムのイメージを分かりやすく想起させますが、ウェルネスの概念や価値観が変化するとともに、旅行に対する顧客ニーズが多様化しているいま、私は2017年、以下のように新しいウェルネスツーリズムを提唱しました。
ウェルネスツーリズムとは「旅先でのスパ、ヨガ、瞑想、フィットネス、ヘルシー食、レクリエーション、交流などを通して、心と体の健康に気づく旅、地域資源に触れ、新しい発見と自己開発ができる旅、原点回帰し、リフレッシュし、明日への活力を得る旅」である。
ここで「原点回帰」という言葉を用いました。
文明史最古の旅は「巡礼」と言われています。「巡礼」とは祈りや魂を癒す旅であり、まさにウェルネスツーリズムの起源がここにあると私は考えます。「原点回帰」という言葉の中には、ウェルネスツーリズムが旅の起源とも言える「巡礼」のように、こころとからだを癒す旅である、との思いを込めています。
そして具体的に「スパ、ヨガ、瞑想、フィットネス、ヘルシー」などイメージしやすいキーワードを並べましたが、ウェルネスツーリズムは、こうでなければならないという固定観念にとらわれる必要はありません。
旅行者が山中湖村の育んできた自然や生活文化に触れ、地域の人と交流し、感動したり学んだり、といった「特別な体験ができる旅」もウェルネスツーリズムなのです。
◆世界で急成長しているウェルネスツーリズム市場
ウェルネスツーリズムの市場はコロナ禍前から世界で急成長しており、世界ウェルネス機関(GWI)によれば、2017年から2019年にかけて市場は毎年8.1%伸長しています。コロナ禍で、この数字は減速しましたが、一方2020年から2025年までの5年間で、ウェルネスツーリズム産業分野は20.9%成長し、ウェルネス関連市場での伸び率はトップになると予測されています。
合わせてウェルネスツーリズムにおける、ひとり当たりの平均旅行支出額は、一般の観光者に比べ約60%も高いことが報告されています。
今後も長期的な成長が見込まれる、ウェルネスツーリズム市場の経済効果に、山中湖村は大いに注目しています。
◆荒川 雅志氏
国立大学法人琉球大学国際地域創造学部 ウェルネス研究分野 教授 医学博士
ニューヨーク大学 客員教授
世界5大長寿地域“ブルーゾーン”沖縄100歳長寿者のライフスタイル研究、沖縄の美容と健康素材の研究で福岡大学大学院医学研究科社会医学専攻修了。医学博士。
ウェルネスツーリズム論を日本の大学で初めて開始し、2023年よりニューヨーク大学客員教授として自然の再生・地域の再生・人の再生を果たすリジェネラティブツーリズム(再生観光)を共同研究中。
ウェルネス研究、ウェルネスツーリズム研究の第一人者。海洋療法学者。
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