◆プラスチックはとても長い間分解されない
ペットボトルや釣り糸が海中で分解されるまでに数百年という予想もあり、プラスチックが一度海へ流出すると完全に分解されるまでに途方もない時間がかかることが分かります。
一方で、世界でプラスチックが大量生産され始めてからまだ70年ほどなので、海へ入ったプラスチックの完全な分解に何年かかるのかを正確に知ることはできません。
JAMSTECの調査では半世紀前のプラスチックごみが深海底からきれいな状態で見つかっているので、100年以上分解しないのは事実でしょう。
分解されるまでとても長い時間が…
◆プラスチックが生態系に与える被害
▽その1 絡まり
イルカやアザラシ、魚類など、350種類以上の生物が海中に捨てられた漁具などに絡まっていたことが報告され、その一部は絡まり事故によって命を落としています。
漁具などに絡まる事故で大切な命が…
▽その2 覆いかぶさり
ポリ袋などのプラスチックごみは海底の生物に直接覆いかぶさり、窒息させ、サンゴや海藻に深刻なダメージを与えます。砂浜に大量に散乱するプラスチックごみは、産卵するために上陸したウミガメの進路を妨げ、適切な産卵場所にたどり着けないことも知られています。
産卵場所にたどり着けない!
▽その3 誤食
クジラ、ウミガメ、海鳥、貝類や動物プランクトンまで、これまでに700種類以上の生物がプラスチックを誤食していることが報告されています。
プラスチックには匂いがつきやすい性質がありますが、海中では生物のエサの匂いがつくため、動物がプラスチックを誤食する原因になっているのではないかと推測されています。
多くの海中生物がプラスチックを誤食
◆マイクロプラスチックとその性質
海へ流出したプラスチックは太陽の紫外線や波の力などによって劣化・破砕して小さくなります。5mm以下のプラスチックをマイクロプラスチックと呼びます。
世界の海の表面には、170兆個ものマイクロプラスチックが漂っていますが、海中にはもっと多くのマイクロプラスチックが存在することが近年わかってきました。マイクロプラスチックは、その小ささ故に、様々な動物がエサと間違えて食べており問題となっています。
◆海洋プラスチックは有害化学物質のカクテル
プラスチックには、特定の性質をもたせるため様々な添加剤が含まれています。たとえば、燃えにくくするための難燃剤や、紫外線による劣化を防ぐための紫外線吸収剤などです。
その一部は、自然に分解されにくく、長距離を移動し、さらに生物濃縮性と毒性が知られ、国連条約によって残留性有機汚染物質(POPs)に指定され、その使用が禁止または制限されています。
また、POPsには様々な種類の化学物質が含まれ、海洋環境にも多く存在しており、プラスチックはこれらの汚染物質を引き寄せ吸着する性質があります。海を漂うプラスチックには様々な有害化学物質が含まれるため、化学物質のカクテルと呼ばれます。汚染物質を吸着したプラスチックを魚が食べ、その魚を私たち人間が食べることで、私たちの体にも有害な汚染物質が溜まっていくことが懸念されています。
巡りめぐって私たちの体にも有害物質が…?
◆「使い捨て」を減らす意識
海ごみの多くが、食品包装やペットボトル、ストローやレジ袋など使い捨てプラスチックです。実は、日本は一人当たりの使い捨てプラスチックの年間排出量がアメリカについで多く、世界でワースト2位という報告があります(国際環境計画(UNEP)2018年度年次報告書より)。
この現状を少しでも良くしていくためには、私たち一人ひとりがどう考え、どのように行動を起こすかが大切です。
世界でワースト2位!
◆未来をよりよくするために…
海洋プラスチックごみ問題という地球規模の課題を解決する第一歩は、私たちがこの問題について知ること、そして身の回りのプラスチックごみを減らすアクションを起こすことです。
ポイ捨てをしないことは当然ですが、使用するプラスチック量を減らすために、マイボトル・マイバックを持つなど繰り返し使えるものを選ぶなど、日常生活の中でできることは色々あります。私たちの未来を守るため、身近なことから始めてみましょう!
「私たちにできることは…?いま出来ることから始めてみよう!」
◆講師プロフィール
国立研究開発法人
海洋研究開発機構(JAMSTEC)
主任研究員
中嶋 亮太(なかじま りょうた)
1981年生まれ。
海洋プラスチック動態研究グループのリーダーとして、水深6,000mで海洋プラスチックごみの調査研究を行っている。
著作に『海洋プラスチック汚染『プラなし』博士、ごみを語る』ほか。
昨年11月19日放送のNHK「サイエンスZERO」に出演するなど、今注目の若手研究員。
◆担当
環境課
グリーン社会推進担当
【電話】内線2255
◆監修
(国研)海洋研究開発機構
中嶋亮太主任研究員
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