■「たつ」を巡る言葉
令和6年は「辰(たつ)年」です。十二支は、もともと12カ月の順を表す呼び名でした。その後、これに12種類の動物を当てはめるようになりましたが、その中で唯一、実在しない生き物が「辰」(竜・龍)です。
■変幻自在の「竜」
日本では空想上の生き物ですが、古代中国では、竜が本当にいると信じられていました。その性格や役割も、悪役になったり、神聖な動物としてみられたり、力強さの象徴として扱われたりと地域によってさまざまです。日本では、竜は雲を呼び、雨を降らせる神として古くから信仰されてきました。また、天に昇る姿から、立身出世や運気上昇の象徴としても捉えられています。
竜は実在しませんが、体形を竜になぞらえ、竜の生んだ子という意味で名づけられたのが、タツノオトシゴ(竜の落とし子)です。タツノオトシゴは、メスから卵を預けられたオスがお腹の中で育てるという珍しい生き物です。オスのお腹から一匹ずつ産み落とされる様子が「落とし子」のようなので、「竜の落とし子」と呼ばれるようになりました。卵を預ける際にお腹同士を付ける姿がハートに見えることや、一度にたくさんの子どもを産むことから、タツノオトシゴは子宝や幸運の象徴とも言われています。
■人気の「竜」「龍」
竜の勢いやたくましさは、慣用句やことわざからも感じられます。
「登竜門」は、そこを通れば立身出世ができるといわれる関門の意味。
また、「一流作家への登竜門」のように、運命を決めるような大切な試験を例えて言います。中国の黄河中流にある急流、竜門は大変な難所で、ここをのぼった鯉は竜になるという言い伝えがもとになっています。
■地道に長く取り組む
「辰」の字を漢和辞典などで調べると、字の成り立ちとして、「二枚貝が殻から足などを出している様子」「ぶるぶるふるえ動く」とあります。「辰」で構成される漢字をみると、「振」「唇」「娠」など、小さく弱々しいものの、新しい物事が内部から始まる胎動を予感させます。「農」には大地を耕し切り開いていく力強さを感じます。
「竜・龍」はどうでしょうか。漢和辞典などによると、字の成り立ちとして、「太くて長い筒型をなす」と解説されています。
「龍」で構成される漢字をみると、例えば、「瀧」は水が太く筋のように流れる様子が、「籠」は太くて長い入れ物のような形が、それぞれイメージできます。
辰年に起きた出来事を挙げると、平成24年「山中伸弥氏がノーベル生理学・医学賞受賞」「東京スカイツリー開業」、昭和63年「青函トンネル開通」など、長年の研究や事業が成果をもたらしたものであり、日々の努力が実を結んでいます。
「辰」「龍」にあやかって、今年も、何事も小さなことからコツコツと、長くしっかり取り組むことで、高く飛躍できる年にしたいものです。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>