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〔特集〕令和6年度 第18回 八百津町中学生海外派遣研修報告(1)

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岐阜県八百津町

■令和6年度 第18回 八百津町中学生海外派遣研修報告
「世界の中の私、そして未来」八百津町中学生海外派遣研修を終えて
団長 社本勝義(八百津町教育長)

1 笑顔の派遣生
5年ぶりの八百津町中学生海外派遣研修。8月30日から9月8日までの10日間、リトアニアそしてポーランドへ10名の子どもたちを派遣しました。これは、郷土の先輩の篤志「吉田茂国際交流基金」によるものです(株式会社イビサ元会長)。
この研修は、実は出発前の事前研修が大切です。語学研修に加え、現地の文化やアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所(以下アウシュヴィッツ)について学びます。その他、八百津町を英語で説明するプレゼンテーションの作成があります。講師は、リトアニアから県庁に出向している国際交流員、ユダヤ人迫害に関する人権教育機関の研究者、ポーランド大使館、英語指導員など多彩です。現地で披露する3つの合唱曲(うち1曲はリトアニア語)の練習もあります。どの研修も真剣にそして意欲的に参加しました。事前に身につけた力と自信は、10日間の笑顔につながりました。

2 熱烈歓迎
リトアニアカウナス市の関係者にとって、“ヤオツタウン〟の認知度は高いと感じました。また、リトアニアにおけるすべてのプログロムで、温かい歓迎とディープな体験が準備されていました。
ドブケビチュウス学校に到着したのは現地時間の夕刻でしたが、子どもたちの伝統的な踊りで温かく迎えていただきました。派遣生の英語のあいさつと現地語の合唱披露の後には現地の方からの拍手喝さいをいただきました。最初の出会いから心理的な壁はずいぶん小さくなったと思います。
校舎の掲示板には、両国の子どもたちの合作の絵画「ブリッジプロジェクト」が掲示してありました。ドブケビチュウス学校の生徒たちは日常的にこれを目にしています。カウナス市との友好は、確実に深まっていることを実感しました。

3 異文化の理解
通常では味わえない研修が用意されていました。農村における伝統的な暮らしの体験やユネスコ世界遺産に登録されている砂丘の見学などです。この研修には、現地校の校長先生や職員、そしてホームステイ先の生徒にも参加していただけました。異文化を知る機会にもなりましたし、リトアニアの方たちが、伝統や自然との共生を大切にしていることを肌で感じました。農村では、現地の遊びを両国の生徒がいっしょに楽しみました。言葉や文化の壁を乗り越え交流し合う姿は、とてもほほえましく、また未来への可能性を感じさせました。

4 ホームステイ
3泊4日のホームステイ。日本語が通じない、そして生活様式が違う中での経験です。会話は英語です。食事のマナーやメニューは異なります。トイレ事情も違います。派遣生の緊張感はかなりのものであったと思います。まさに「苦労を買う」経験です。しかし、派遣生はやり切りました。ホームステイ先の各家庭のご配慮もあり、日を追うごとに、関係性が深まっていったようです。「言葉や文化が違っても、互いに理解し合おうとする気持ちが大切である」。派遣生は異文化理解における大切でシンプルなコツに気づけたことでしょう。派遣生にとって、大きな経験となったはずです。リトアニアを離れる際の、派遣生とご家族とのハグがそれを物語っています。

5 感動のお別れ式
リトアニアの最終日には、学校関係者、カウナス市関係者、両国児童生徒、そして在リトアニア日本大使館の方々が集まり、お別れ式が行われました。両国の児童生徒が日本語で合唱しました。曲は『君が明日と呼ぶものを』。この曲は、八百津小学校の杉原千畝創作劇エンディング曲であり岐阜県国民文化祭テーマ曲でもあります。曲の最後には、リトアニアの子どもたちが日の丸を掲げてくれました。合唱後のブラボーの声と拍手。会場は温かい友好の空気につつまれました。

6 平和・人道の想い
ポーランドでは、アウシュヴィッツやワルシャワ蜂起博物館などで、平和や人としての生き方について深く考える場面がありました。
あえて残されている生々しい爪痕や映像を目の当たりにした子どもたち。実物を目にしたこと、施設や展示の空気感、そしてガイドさんの熱い語り、現地でなければ味わえない経験です。事前研修での予備知識が、実感を伴う深い理解となります。
アウシュヴィッツで派遣生は、ガイドに対してこんな質問をしています。「なぜ人はこんなひどいことをしてしまうのか」、「なぜこの施設を残しているのか」、「ガイドとしての想いは」などなど。ガイドが力強く語った「君たちのふるさとには杉原千畝という、人の弱さに立ち向かい、正しいことを貫いた先輩がいる」の言葉から、派遣生は自分をみつめ、そして勇気をもらったことでしょう。
派遣生は人間の弱さと強さの両方を自分の言葉で必死に理解しようとしていたと思います。それは、小中学校で学んできた八百津町の人道教育とつながります。
その夜のホテルでの反省会。派遣生の口からは、日常と未来に向けた、温かくたのもしい言葉が発せられました。

7 感謝
世界の中の日本人として、どう考え、どんな生き方をめざすのか、それぞれの派遣生なりに感じることの多い研修だったのではないでしょうか。これは、現地にて肌で感じるからこそ実感できるものです。
この研修のきっかけである、郷土の先輩、吉田茂氏(国際交流に係るご寄附)、杉原千畝氏(リトアニアカウナス市との縁)、そして、研修を後押ししてくださった両国の関係者や保護者のみなさまに深く感謝いたします。

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