養老町人権教育研修会
~湯浅 誠さんの講演より~
7月23日(火)に町中央公民館中ホールにて養老町人権教育研修会を開催しました。講師には、東京大学特任教授で認定特定非営利活動法人全国こども食堂支援センターむすびえの理事長でもある湯浅誠さんをお招きし、お話しいただきました。たくさんの人との関わりの中で「自分にできることはなんだろう。」と考え、「にぎわいを創りたい。そこからこぼれる子をなくしたい。」という思いで設立された「むすびえ」。多くの実践とデータから導き出された“地域”と“居場所づくり”について講演していただいた内容を紹介します。
■あなたの居場所はどこですか
講演の中で湯浅さんは「あなたの居場所はいくつありますか。」と問われ、続けてこう話されました。「大人の居場所の平均は2.64カ所あります。大人も子どもも居場所は多ければ多いほど自己肯定感が高くなり、挑戦しようという意欲がわきます。さらに、充実感や希望をもち、貢献しようとする気持ちも高まります。しかし、30年前と比べると子どもの居場所であった駄菓子屋は7割減りました。さらに、空き地にはフェンスがされ、入れないようになりました。これは、“ここで何かあったら誰の責任?”という意識からくるもので、横浜では、空き地が0になっています。」
さらに“誰の責任”という意識は別の状況でも見受けられるとのことで、「子どもの頃、友達の家で遊んでいて帰るのが遅くなった時、『夕飯、一緒にどう?』と聞かれ、友達の家で夕飯をごちそうになった経験や記憶はありませんか。しかし、この“誰の責任”という意識がそういった場所や声かけをなくしてしまっています。また、お盆や年末年始に集まる機会も年々少なくなっているのではないですか。」と話されていました。
■居場所とつながり
私たちの意識は、“個→孤→つながり→しがらみ→個→…”と循環しているそうです。1995年に起こった阪神淡路大震災では、仮設住宅での生活で集会所の設置が許可されず、“孤”独死される人が多くいらっしゃいました。2011年に起こった東日本大震災では、つながりの大切さが重視され、孤独死を防ぐため、仮設住宅でも積極的に集会所が作られました。
個人差や地域差もあると思いますが、皆さまの周りもコロナ禍によって、つながりが薄れ、しがらみの部分が強調されるようになってきているのではないでしょうか。「『つながりは大切だし、必要だと思うけれど、しがらみは嫌だ。』そんな意識を解消するために、地域の人が気軽につながれる“ゆるめ”の場所づくりが大切である。」と湯浅さんは話されました。
■自分にできることは
以前学校で、児童が「知らない人に名前を聞かれて怖かった。」と話をしてくれたことがあります。しかし、事実を確かめていくと、地域の人が素敵な挨拶をするその児童を褒めようと「名前なんて言うの?」と声をかけたということが分かりました。小学校では、知らない人に声をかけられた時の対処法について指導しています。その指導の影響で声をかけられた児童は「知らない人に名前を聞かれた。怖い。」という意識になってしまったのかもしれません。どこかでつながりがあれば…。と寂しく感じたことを覚えています。研修会参加者の感想にも、「私は小さい頃、地域の人とのつながりがあったと思う経験がありません。」とありました。しかし、こう続けられています。「でも、今日のお話を聞いて、今の自分にできることをして、地域の子どもをつなぐ一助になりたい。」と。この人は講演を聞き、何か行動を起こしたいと感じていただけたのでしょう。これが“ゆるめ”の場所づくりのきっかけとなるのではないかと考えます。そして、その思いや行動の積み重ねが、挨拶を交わす場所も一つの居場所となっていくのではないでしょうか。
湯浅さんは、結びに「居場所づくりは地域の未来をつくる。」と話されました。誰もが心から安心できる居場所づくりをしていくことは、人を大切にすることにつながります。“子どもたちに、「地域にお世話になった。」という思いをもってもらえる”ように、“誰もが心から安心して過ごせる居場所が一つでも増える”ように、“ゆるめ”の場所づくりのために“自分にできることは何か”を考えて行動することが改めて大切だと実感しました。
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