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津山の歴史 あ・ら・か・る・と

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岡山県津山市

■宇田川榕菴と化学実験
「日本近代科学の生みの親」ともいわれている津山藩医の宇田川榕菴(ようあん)は、西洋の化学について勉強する中で、理論だけではなく、実験を行うことも多々ありました。榕菴が刊行した化学書『舎密開宗(せいみかいそう)』は、フランスの科学者ラヴォアジェの学説の紹介に加え、その他多くの化学書を参考にした解説や、榕菴が行った実験などが書かれた本です。今回はその中から一部を紹介します。
この本の第204章に「青酸鉄」という項目があります。そこには「硫酸鉄の溶液と青酸カリの溶液を混ぜると、硫酸は鉄から離れてカリと化合し、青酸はカリから離れて酸化鉄と化合し、深い青色の沈殿物ができる。これが青酸鉄である。青酸カリ溶液で白紙に字を書き、乾くと文字は透明になるが、これを硫酸鉄の溶液に浸すと、たちまち洋靛色(ベルいろ)(青い色)になる。硫酸鉄の溶液で字を書いて、青酸カリの溶液に浸しても同様となる」と記されています。
榕菴はこの学説をもとに、天保9年(1838)に実験を行っています。まず紙に水墨で花のないアサガオと金魚の絵を描き、青酸カリの溶液でアサガオの花と金魚のまわりに水を描きます。青酸カリの溶液は乾くと透明になり、花のないアサガオとただの金魚になります。そこに硫酸鉄の溶液を塗っていくと「手の動きにつれアサガオは青々とした花が咲き、金魚は遊泳の波を得た」とあります。また、この原理を応用して、没食子(もっしょくし)(ブナ科の植物の若芽が変形してコブになったもの:タンニン成分が多い)浸液でナスを、青酸カリ溶液で花を描き、乾いて透明になったところに硫酸鉄の溶液を塗るという実験もしています。溶液を塗るにつれ紫色のナスと青色の花が現れ、これを見た榕菴は「思わず机をたたいて驚喜した」と記しています。
榕菴は楽しんで実験をしているようですが、使用している薬品は、現在では毒物や劇物となっているものもあります。皆さんはまねをしないでくださいね。

問合せ:津山洋学資料館(西新町)
【電話】23-3324

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