市では単年度の収支だけでなく、中長期の財政見通しをもって各事業を進めています。今後も適切な財政運営が行えるよう、近年の状況を踏まえて財政見通しを整理しました。
■現状
◆人口減少と歳出の状況
左のグラフは久慈市の人口と市民税の推移を示したものです。令和6年3月の久慈市の人口は31590人となっています。国勢調査の人口を基にした人口推計によると、令和7年度には、推計人口が3万人を切ると予想され、21年後の令和27年には、約2万人。26年後の令和32年には、約1万8千人と減少し続ける見込みとなっています。人口が減少すると税収が減り、市の自主財源が減ることが予想されます。
一方で歳出は、平成28年台風第10号や令和元年台風第19号、新型コロナウイルス感染症対策事業などの影響により、2百数十億円という大きい予算規模が続いている状況です。今後も福祉関係や公共施設の維持管理など一定の支出が見込まれています。
自主財源が減ると、法律で定められた事業など毎年決まった事業にしかお金が使えなくなり、市の裁量で行う自由な事業実施ができなくなります。久慈市においても自主財源の確保が課題となっています。
◆基金の状況
基金とは、目的のために積み立てる市の貯金です。右のグラフは、突発的な支出に備えるための財政調整基金と、市の借金である市債の返済に充てる市債管理基金の推移を示しています。
令和5年度の当初予算編成で約7億円、令和6年度は約6億円の取り崩しを行い、基金が急激に減少しています。基金が無くなると災害などの突発的な出費に対応できなくなるため、収入と支出の均衡を図り、基金を取り崩さない財政運営を目指す必要があります。
▽基金がなくなる・財政の硬直化が進むと…
・公共施設や道路の維持などができない
・突発的な災害に対応できない
・市の裁量で事業の実施ができない
■対策
◆財政健全化に向けた取り組み
市財政の将来を見据え、持続可能な行財政基盤の構築を目指すために、7つの財政健全化項目を実行し、令和7年度から9年度までの3年間の取り組みで収支の均衡を目指します。
取り組み効果見込み額:5.5億円
▽事務事業経費の削減
事業の選択と集中により、不要不急の事務事業を選別。適正なサービス水準に配慮しながら効率化を行い、歳出規模の圧縮を図ります。
▽市有財産の売却・活用、ふるさと納税
遊休施設・設備の売却や市有財産の活用を実施。ふるさと納税返礼品の充実・発信強化などを推進し、歳入確保に務めます。
▽使用・手数料の見直し
施設使用者、使用目的による減免基準や物価上昇を勘案した見直しを行います。
▽補助・負担金の整理
市が実施している補助金と負担金の内容や効果を整理し、全体圧縮を図ります。
▽公共施設の合理化
施設の管理計画に基づき、統合や廃止、民間事業者への譲渡などを進めます。
▽職員人件費の抑制
事務事業の選択と集中により業務量を削減し、時間外勤務手当の縮減などを図ります。
▽市債発行額の抑制
公共事業を圧縮し、プライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字額の拡大を図ります。
◆取り組みの効果
左のグラフは、上記の財政健全化項目の取組効果を表したものです。棒グラフは基金残高、折れ線グラフは収支の見通しを表しています。
濃い色のグラフは、現状のまま推移した場合の想定です。令和11年度から基金が枯渇し、収支も赤字になることが予想されています。
薄い色のグラフは、上記の取り組みを実施した場合の効果を見込んだ試算になります。令和15年までの試算では、収支は均衡を続けていきます。
今後も市民のニーズに応え、適切な行政運営を行っていくためには、上記の取り組みが必要不可欠です。取り組みへのご理解とご協力をお願いいたします。
◆持続可能な行政運営を目指して
市が持続可能な行政運営をしていくためには、財政健全化の取り組みに加えて、自主財源の確保に努めなければなりません。
市では、洋上風力発電事業の誘致や脱炭素先行地域推進事業を進めています。投資による地域経済の拡大や企業誘致による固定資産税の増、雇用創出、所得向上による市民税の増加などが見込まれます。今後も新たな自主財源の確保に向けて、取り組んでまいります。
財政健全化の取り組みと合わせて自主財源の確保を進め、持続可能な行政運営を進めていきますので、ご理解とご協力をお願いします。
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