本町には、国指定史跡である「栗木鉄山跡」があります。国指定史跡とは、日本の歴史を正しく理解するうえで欠かせない重要な遺跡のことです。
現在、遺跡を適切に保存活用すべく、町教育委員会では「国指定史跡栗木鉄山跡保存活用計画」の策定を進めています。
本号では、計画策定の背景や目的などについてお知らせします。
■栗木鉄山跡とは
「栗木鉄山跡」は、国道397号栗木トンネル付近に位置し、明治から大正にかけて稼働した民営製鉄所「栗木鉄山株式会社」の跡地です。郵便局や学校、職員住宅などが整備された「製鉄村」を形成し、大正2年の最盛期には500人超の従業員がいたとされ、銑鉄生産量は日本で第4位を誇りました。
山間の地形を活かした高炉様式は全国的に珍しく、日本の近代製鉄技術史の中でも貴重な存在でしたが、大正9年に閉山し国有林となった後は、その存在は研究者や郷土史家に知られるだけとなりました。
そのような中、昭和58年に「栗木鉄山跡」が国道改良工事に伴う新ルートに含まれ、消滅の危機に瀕します。そこで、町は遺跡の重要性を認識し、路線変更を働きかけた結果、最小限の破壊にとどまりました。
その後、町ではその重要性を明らかにするため3度にわたる調査を行い、平成9年に町史跡に指定。さらに調査を重ね、平成11年に県史跡に指定されました。
■国史跡に指定されるまで
町では、平成27年度に策定した町総合計画において、国指定名勝である「種山ヶ原」と併せて、種山ヶ原の観光価値向上のため「栗木鉄山跡」の国史跡への指定を目指すことを盛り込みました。
これを踏まえ、町教育委員会では、県教育委員会や国との協議を進めるとともに、専門家を交えた遺跡価値の検証を行うなど、6年間にわたり国史跡への指定に向けて取り組んできました。
そして、令和3年、国に国史跡への指定を求める具申書を提出。次の点が評価され「栗木鉄山跡」は国史跡として指定されました。
・釜石や八幡での近代製鉄が本格化する前の重要な遺跡であること
・「釜石鉱山田中製鉄所」以外に大きな製鉄所が無かった時代の数少ない製鉄所の遺跡であること
・石垣や水路、高炉の位置などを示す製鉄所跡の遺跡が良好な状態で残されていること
■計画策定の背景と目的
「国指定史跡栗木鉄山跡保存活用計画」は、文化財保護法に基づく「市町村の区域における文化財の保護及び活用に関する総合的な計画」に位置づけられるものです。
町教育委員会では、これに基づき「栗木鉄山跡」を適切に活用し、次世代へと保存していくための基本方針を示す本計画を策定することとしました。
■策定までの流れ
町教育委員会では「国指定史跡栗木鉄山跡保存活用計画」の策定にあたり、保存活用の方法を総合的かつ効果的に検討するため、本年度に国指定史跡栗木鉄山跡保存活用計画等策定委員会を設置しました。
この策定委員会では、有識者や学識経験者、地域の代表者といった委員の方々に、県や国の関係者をオブザーバーとして加え、検討を進めていきます。
策定委員会は、年に3回(7月・11月・3月)の開催を予定しており、町教育委員会では令和8年度まで計画の策定を目指します。
※「栗木鉄山跡」全体概要図は本紙をご覧ください。
■「栗木鉄山跡」を未来に残すために
「栗木鉄山跡」が国史跡に指定となり、今日まで至るのは、遺跡の重要性を理解し、それを守ってきた先人たちの努力の積み重ねがあったからこそです。
私たちは、このようにして受け継がれてきた遺跡を保存活用し、未来につなげていかなければなりません。そのために、まずは遺跡の重要性を私たちが「知る」ことが大切です。
◇「栗木鉄山跡」の見学会を行います
この機会に「栗木鉄山跡」について、理解を深めてみませんか?
日時:9月21日(水) 10時~11時30分
場所:栗木鉄山跡
定員:20名(先着順)
申込:9月18日までに町教育委員会に電話またはFAXでお申込みください。
【電話】46-3863【FAX】46-3515
◆「栗木鉄山跡」の重要性を町全体へ
町文化財調査委員で「すみた製鉄物語 住田製鉄の覚書」の著者である千葉英夫さんに「栗木鉄山跡」に込める期待についてインタビューしました。
「栗木鉄山跡」には、自然と共存する環境の中で、当時の歴史を感じられる場所として守られてほしいと思います。町民全員が「栗木鉄山跡」の語り部となるくらい、町民の共有財産としてその価値を広く知ってもらい、町に誇りを持ってくれたら嬉しいです。
問い合わせ:町教育委員会 生涯学習係
【電話】46-3863
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