■抗がん剤は何でしんどいの?
今回、従来用いられてきた抗がん剤についてお話をします。確かに現代においても『従来用いられていた抗がん剤』はがん治療のなかでも依然大きな役割を担っています。なぜ従来の抗がん剤は副作用が強くなってしまうのでしょうか?唐突ですが、皆さん『抗生物質』という言葉は聞いたことがありますよね?そう、細菌をやっつける薬です。抗生物質は抗がん剤みたいに強い副作用が出ることはまれですよね。少し難しい話になりますが、抗生物質のターゲットは細菌という『原核生物』に分類される生き物です。そして私たちのような高等生物は『真核生物』に分類されます。真核生物とは真核細胞で構成された生き物です。一方で原核生物とは原核細胞でできた生き物です。真核細胞は原核細胞が持たない細胞核を持っているなど、構造が随分と複雑に出来ています。
このように原核生物と真核生物では細胞単位で大きく構成が異なります。そのため、抗生物質は真核細胞には作用せず、原核細胞にだけ作用する部分をターゲットに攻撃してやればよいのです。では抗がん剤はどうでしょう?抗がん剤がターゲットにするのは当然がんです。『がん細胞』です。では『がん細胞』は何に由来するのでしょう?実はがん細胞は自分自身の細胞がおかしくなってしまったものが、がん細胞なのです!こうなると大変です。なにせがん細胞は、元はといえば自分自身の細胞です。ばい菌をやっつけてくれる免疫細胞も、体に入ってきた細菌は当然味方の細胞と見分けて攻撃することが可能です。しかしながら、免疫細胞はがん細胞を敵として見分けることが難しいことも多いのです。元はといえば自分自身の細胞ですから!
ここに抗がん剤創薬の難しさがあります。がん細胞と正常細胞の違いは免疫細胞も見分けられないほどわずかでしかないのです。抗生物質のようにはいきません。したがって従来の抗がん剤はがん細胞もやっつけるけど、似通っている自分自身の細胞も大きなダメージを受けてしまうのです。その結果がおう吐や抜け毛、けん怠感や衰弱といった強い副作用につながるわけですね。ではどのようにこの副作用に対応したらよいか??次回に続きます。
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