■シリーズ「博物館コレクション」第29回
安芸高田市歴史民俗博物館 学芸員 古川恵子
◇氷冷蔵庫
歴史民俗博物館蔵(1955年以)
(旧高宮町歴史民俗資料館収蔵)
本体:奥行42.3mm×横55.5mm×高さ84.1mm
※詳しくは本紙をご確認ください。
歴史民俗博物館に展示中の、電気ではなく氷で冷やす冷蔵庫です。
上段に氷の塊を置き、冷気で下段の食品を冷やす仕組みですが、実際はあまり温度が低くはならなかったようです。
氷冷蔵庫が初めて登場したのは1903(明治36)年で昭和に入り徐々に普及し始めたようです。展示の冷蔵庫は1955年以降に製造されたものと思われます。
氷冷蔵庫は当然ながら氷が必要なため、都市部を中心に広がったと考えられ、高田郡内では一般家庭に広く普及していたものではないようです。
一般家庭はどうしていたのかというと、近年のように夏の気温が高くなかったため、食品は涼しい場所に保管したり、冷やす際は井戸水や川の水を利用すれば事足りたようです。確かに、生魚や肉を当たり前に買う時代ではなく、また今ある加工の要冷蔵食品は電気冷蔵庫の普及によって作られ広まったものだと考えると納得です。
ちなみに電気冷蔵庫が発売されたのが1930(昭和5)年で、国内普及率は1965年時点で51%、1970年で89%でした。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>