わずか76年後には、日本の人口が今の半数に減少すると見込まれるなか、“ふるさと熊野”を子や孫に残すために、私たちには今できることがあります。
個性豊かな文化を活かした魅力的なまちづくりも、移住する場所、住み続ける場所として人々をまちに惹き付ける大切な取り組みの一つのはずです。
熊野町は筆産業とそれにより培われた文化芸術が息づくまちです。このソフトパワーを活かし、この地に住む人々がつながり、まちと文化を未来につなげるため、都市公園と観光交流拠点施設の建設を進めています。
今月号では、観光交流拠点施設(建物)の設計者の選定方式、経緯および結果などを紹介します。
建築設計者の選定は「公募型プロポーザル」と呼ばれる方式で行いました(関連記事:広報くまの6月号)。
町は設計提案の募集に際し、6つの事柄を掲げ、この施設の活動を通じて実現を目指す姿を示しました。
○発想力や創造力を発揮した創作活動が協働して展開され、演出される。
○新しい自分を見つける自律的な探求の取組がなされる。
○多彩なアート活動を通じて「くまのらしさ」がデザインされ、発信される。
○自然・くらし・文化・産業が調和した「くまのの魅力」が再確認され、磨かれる。
○「そこに居るだけ」の心地よさと価値観が実感でき、たおやかさや寛容さが醸成される。
○ミュージアムを含めた全体空間のなかで、国や地域、世代を超えた交流の輪が広がる。
選定審査を公平・公正に行うため、あらかじめ、選定の基準や方法、外部の有識者6人で構成する選定委員会の設置などを公表しました。一次審査(評価テーマに沿った書類審査)で応募36作品から6作品に絞り込み、令和4年9月に公開の場で実施したヒアリング(建物模型を用いた各提案者からの説明や質疑応答)を踏まえ、二次審査を行いました。
その結果、環境デザイン機構・角建築研究室 設計共同体(福岡県福岡市)を建築設計者に選定し、基本設計および実施設計を行いました。
■建築設計者選定委員会会長のコメント
広島大学大学院 先進理工系科学研究科
教授 田中貴宏さん
委員会で最終的に選定した提案は、熊野の代表的景観である「里山」を大事にしつつ、その中に「創造や交流の場」を配置するというもので、熊野の自然とこの場に来られる人々への優しさが感じられる、優れた建築です。このような建築が熊野に誕生することは、とても楽しみです。
ところで、「生きた建築」という言葉がありますが、建築は、地域のみなさんに使われ、愛されて初めて「生きた建築」となります。この建築が完成したら、町民のみなさんの出番です。この建築を使いこなし、みなさんの手で「生きた建築」にしていただけることを期待しています。
■建築設計者のコメント
環境デザイン機構・角建築研究室 設計共同体(福岡県福岡市)
プロポーザルでの提案は、施設運営の基本的な考え方を可視化したものです。それをベースに町当局や筆の里工房の担当者のほか、町民のみなさんとも対話を重ねつつ、利用される人々の楽しまれている姿、屋内外の空間が創造的に使われている様子を思い描きながら実施設計にあたりました。
資材価格の上昇で、設計者の知恵と工夫が試されるなか、このプロジェクトに関わることができ、光栄に思います。
9月号では、建築設計について熊高生や町民のみなさんからいただいた意見、それらの反映や施設の特徴などを紹介します。
問合せ:
〔公園について〕都市整備課【電話】820-5608
〔施設について〕産業観光課【電話】820-5602
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