■黄色いそうめんの正体
ウミガメが産卵する砂浜は、高温、乾燥、高塩分、強風、砂という不安定な足場など、植物には厳しい環境ですが、例えば大浜海岸には、ハマヒルガオ、コウボウムギ、ハマボウフウ、ハマゴウ、ハマオモト(浜百合)など様々な海浜植物が見られます。これらには、砂浜の地形を維持し、その生態系を支える役割があるので、ウミガメの産卵環境を知る上でも、きちんと学ぶ必要があります。そんな大浜海岸で、ハマゴウに絡みつく「黄色いそうめん」の存在が気になっていました。ハマゴウは、背は低いもののしっかりとした幹、枝、根を持った木の仲間です。その枝葉は風に吹き飛ばされる砂を捉えて、浅く広く張った根は捉えた砂を留めるので、ウミガメの産卵場には重要な植物です。そのハマゴウに絡みつく「黄色いそうめん」はネナシカズラの仲間です。この仲間は地中に根を張ることなく、絡みついた植物から栄養を吸い取る寄生植物です。この「黄色いそうめん」は以前から確認していたのですが、今年はその勢いが強く、あちらこちらで絡みつかれ葉を落とし弱ったハマゴウが目立ちました。この「黄色いそうめん」について調べてみたところ、第一候補にアメリカネナシカズラという移入植物が上がりました。アメリカネナシカズラは北アメリカが原産地で、種は2mmと小さく動物に食べられても長い間、発芽する能力を失わない繁殖能力が高い植物です。1970年頃に多摩川で確認されて以来、現在では日本全土に拡がり、環境省によって要注意外来生物に指定されました。一方、第二候補に上がったハマネナシカズラは同じネナシカズラの仲間ですが、こちらは在来種で、国内の生育地が10カ所以下にまで減少して絶滅危惧種に指定されています。移入種か絶滅危惧種か、大いに悩み、徳島県立博物館の上席学芸員の小川さんに相談したところ、さっそく現地調査をして頂き、「黄色いそうめん」の正体は、ハマネナシカズラと判明しました。この調査によって、ウミガメ産卵場として天然記念物に指定されている大浜海岸には、希少なハマネナシカズラが今なお生育している事が判りました。
館長:平手康市
うみがめについての質問をお送りください。お答えします!
〒779-2304徳島県海部郡美波町日和佐浦369うみがめ博物館カレッタ「質問係」
■Question
ウミガメはどうして何回かに分けて産卵するの?
■Answer
生き残ることが難しい海で子孫を残すためには出来るだけたくさんの卵を産む必要があります。しかし、海中を素早く泳ぐように進化したウミガメの体内には隙間が少ないので、何回かに分けてできるだけ多く産卵しているようです。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>