阿波町北整理 医療法人森下会森下医院 森下和哉(もりしたかずや)先生
大腸がんには、標準治療として認められた治療法があります。がんにおける標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点から、効果があって安全性が確認された、現在利用できる最良の治療法を示します。
治療法は医学の進歩とともに新しく開発されるため、標準治療も定期的に見直されています。新しい治療法と現在の標準治療を科学的な手法で比較して、現在の標準治療と同程度の効果や安全性がある、または標準治療よりも優れていると確認されれば、新しい治療法も標準治療となります。
大腸がんの治療の基本は、がんを確実に取り除くことです。標準治療は次の通り4つあり、治療の中心は手術です。
■手術
手術でがんを切除します。早期がんの人も進行がんの人も受けられます。開腹手術が基本ですが、近年、結腸がんでは腹腔鏡手術がほとんどで、直腸がんではロボット支援下手術も行われています。
■内視鏡治療
内視鏡治療とは、おなかを切らず、肛門から内視鏡を挿入して治療する方法です。大腸がんの治療法の中でも患者さんの体への負担が最も軽い方法ですが、受けられるのはステージ0と1の一部の人です。
■薬物療法・放射線療法
薬物療法は、抗がん剤などの薬でがん細胞を死滅させ、がんが大きくなるのを防ぐ治療法です。放射線療法は、放射線でがん細胞を傷つけて、がんを小さくする治療法です。ステージ3や4といった、リンパ節転移や遠隔転移のある人が主な対象で、ステージ2の一部も対象になることがあります。
薬物療法と放射線療法は、手術の効果を高めるための補助療法として行われることがあります。手術前に行う場合は術前療法、手術後に行う場合は術後補助療法といいます。手術で切除できない場合は、薬物療法と放射線療法が中心です。
大腸がんには進行度に応じた治療方針が示されていますが、進行度だけでなく患者さんの体の状態や持病なども考慮して、患者さんに合った治療法を選択する必要があります。高齢などで体力が低下していて、手術の危険性が高いと判断されたら、薬物療法や放射線療法が提案されることもあります。医師の話をよく聞き、自分の体の状態とがんの状態を理解してどの治療法を受けるのかを考えましょう。
このコーナーは阿波市医師会・阿波歯科医師会・板野歯科医師会のご好意により提供いただいた原稿を掲載しています。
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