■カンキツの果実腐敗対策
温州みかんが色づき始め、いよいよ収穫期を迎えますが、みかんを収穫して箱やコンテナに保存中に果実が腐ることがよくあります。温州みかんは皮が剥きやすく食べやすい反面、腐敗しやすい品種でもあります。出荷後に箱の中で腐敗が多発することがあり市場病害(しじょうびょうがい)と呼ばれ産地イメージの低下につながることもあります。今回は、収穫後のみかんを腐らせないための対策について解説します。
◇(1)カンキツ類の腐敗病
カンキツの皮にはワックス層があり貯蔵性のある青果物ですが、なんらかの原因でカビが付着すると腐敗します。腐敗原因の大部分は「緑かび病」、「青かび病」というカビ菌による病気で、病原胞子は空気中を浮遊しています。はじめ果実の一部に透明(水浸状)の小さな腐敗から始まり腐敗が広がると中心部から青緑色のカビが生えて全体が腐敗します(写真1)。時には接しているまわりの果実まで共腐(ともくさ)れを起こすことがあり、発見が遅れるとカビの胞子が飛散してまわりの果実を汚すこともあります。
◇(2)発生原因
腐敗病の発生は、気温と湿度などの環境が大きく関わり、年内に収穫期を迎える「温州みかん」は秋冬季(しゅうとうき)に雨が多い年に腐敗が増加します。果実の外皮は柔らかく、収穫後はコンテナ等に入れるため果実の呼吸により容器内の湿度が上昇し腐敗の発生条件が整います。しかしカンキツは外皮の表面にワックス層があり簡単には腐敗しにくい果物ですが、なぜ腐るのでしょうか。いくつか原因が考えられます。第1には、成熟期の果皮のワックス層に傷が付くことで、ここから菌が侵入し腐敗すると考えられます。収穫や選別の時にハサミ傷や果梗枝の切り残しによる他果実への刺し傷、採果かごやコンテナ内の砂や硬いゴミによる傷、果実を落としたり乱暴に放り投げた時にできる果皮の打撲など人的な要因で発生します。第2には、秋冬季が温暖で降雨が多いと、皮がボカボカとなる「浮皮」が発生やすく、皮が軟弱となり傷みやすいため腐敗につながりやすくなると考えられます。
◇(3)腐敗を減らす対策
果実腐敗を発生させないためには、果実に生傷をつけないことでハサミ傷をつけないように丁寧に収穫を行うこと、容器内に硬いものがないか注意が必要です。そのためには、果梗枝の2度切り収穫、手袋をして果実を丁寧に扱う、かごからコンテナへの移し替え時や選別時には果実を放り投げたりせず、丁寧に果実を扱うよう心掛けてください。鳥類(メジロやヒヨドリ)による樹上でのひっかき傷や突つき傷、害虫の食害なども生傷として腐敗原因になるので、収穫時や選別時によく点検し、生傷果として分別するとよいでしょう。防腐剤の散布は必須作業として収穫の1週間前ころに殺菌剤を散布することで、腐敗を減らすことができます(表1参照)。また、温州みかんや長期貯蔵をする伊予柑や八朔では、収穫直後にキャリーのまま雨の降りこまない軒先(日陰)で5日程度、段積みで放置し、果実重が5%程度減量すると皮がしなやかになり予措効果により貯蔵性が向上します。基本的な作業を丁寧に行うことで腐敗を減らすことができます。
▽表1 カンキツ腐敗病農薬
※詳細は本紙をご覧ください。
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