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しまなみ農業だより

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愛媛県上島町

■かんきつの晩秋肥について
秋も深まり、実りの秋を迎え、果樹類では果実を付けてくれた1年の労をねぎらう意味で、お礼肥(おれいごえ)としてやる肥料を晩秋肥(ばんしゅうごえ)と呼びます。肥料の価格高騰でやろうかどうしようか思案する声もちらほら聞かれます。今回はカンキツ栽培での晩秋肥の効果について解説します。

◆(1)カンキツ栽培と施肥
カンキツ栽培では、品種により年間25kg~40kg程度のチッソ成分の肥料を施用しています。毎年肥料をやる理由は、果実や樹の成長に必要な養分を土から収奪し、育った果実は人が収穫します。自然界では果実は地面に落ちて分解され、土中の養分となり再び植物が吸収して育つというサイクルが成り立ちますが、栽培果樹ではその養分サイクル成り立たないので収穫した果実の養分を肥料として補う必要があります。ただし、施肥をやめたからすぐに実が成ならなくなることはありませんが、樹の生育や収穫量が年々減ってきます(図1参照)。

▽図1 温州みかんに対する年間施肥量と収量の推移

◆(2)晩秋肥の効果
晩秋肥の効果は、(1)果実の成り疲れによる樹生回復、(2)耐寒性の増強、(3)根に多く貯蔵され、翌春の新梢発育や開花に利用する貯蔵用分として蓄えられます(図2参照)。樹勢回復と翌春の新芽の発育に利用される重要な施肥といえます。

▽図2 温州みかんによる年窒素肥料の移行先

◆(3)秋肥施用のポイント
晩秋の頃は冬に向かって寒くなる季節で、カンキツ類にとっては根の吸水能力が低下する時期となります。また、11月は、まだ果実の成っている品種が多く、施肥が早すぎると着色の遅れ(緑色が残る)や浮皮(皮の肥大が進む)など果実品質に悪影響を及ぼす場合があります。根が活発に吸収するには地温が12℃以上必要で、瀬戸内地域では12月頃から地温が12℃を下回り始めます。また、有機配合肥料はすぐに吸収されないので、成分が溶出して吸収できるには1か月程度必要なので11月上旬~中旬頃に晩秋肥を施用するとよいでしょう。収穫を終わらせてからと後回しにすると気温が下がり肥料の働きが半減するので収穫の合間を見て適期施肥に努めてください。
また、今年着果が少なかった樹は、経費節減のため肥料を減らせるの?と考えがちですが、果実が成っていなければ翌春にはべた花が予想され着花過多による樹勢低下が心配されますので基準どおりの施肥をお勧めします。

◆(4)年間施肥量と果実品質
肥料はカンキツ類の生育への影響はすぐには現れません。むしろ、肥料のやりすぎの反応が早く現れますが、肥料不足は、短期的には品質向上(甘い)となる場合もあります。しかし、長期的には糖度低下や着色不良、隔年結果が増幅してきます。栽培経費の節減のため肥料代の節約も考えなければなりませんが、家畜堆肥の併用や標準施肥量の3割程度が削減の許容量と考えます(図3参照)。

▽図3 窒素施用量と果実品質(温州みかん)

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