■タヌキのはなし
タヌキは、人を化かすなど逸話の多い日本人にはなじみ深い動物です。日本全国に分布し、島内ではイノシシの棲息以前から棲息しています。雑食性でカンキツ類をはじめ農作物等を食害する害獣とされています。今回は、タヌキの生態について解説します。
◇1 タヌキの生態・行動習性
タヌキは体長約40~60cm、体重3~10kg程度のずんぐりした体形のイヌ科の哺乳動物です。主に山林で生活しますが、雑食性でエサ求めて人里近くに出没し住宅周辺に巣穴を作る個体もいます。非常に警戒心が強く日中は穴倉で過ごし、夜行性で採食活動にほとんどの時間を費やすようです。なわばりは持たず単独または家族単位の群れで行動し、行動範囲の中に複数の個体が一定の場所に糞(くそ)をする「ため糞」という習性があります。臆病な性格から驚くと一時的に気を失い眠った状態になることから、人を欺(あざむく)く行為として「タヌキ寝入り」という言葉があるように、タヌキには天敵から身を守る本能的な行動として備わっているそうです。また、ずんぐり体型ですが身体能力は高く1m近くジャンプできイヌ科でありながら木に登ることができます。繁殖は年1回、5月~7月に4~6頭の子を出産します。
◇2 農業被害
タヌキは雑食性で主に果実や種子、昆虫やミミズなどの小動物、生ごみ等を漁る(あさる)こともあります。島のタヌキは夜間の大潮の干潮時には海岸まで餌を探しに徘徊するようです。農業被害はイノシシに比べ1回の採食量が少ないので大きな被害にはなりませんが群れの大きさで被害程度が異なります。ミカンでは低い位置の果実が食害されやすく果実を引きもぎ皮だけ残して食べているのが特徴です(写真2参照)。
また、ワイヤーメッシュで囲っているのにミカンが食べられた場合はタヌキの被害を疑います。イノシシのように枝の引き裂きや果実を荒食いして食い散らかすことはありません。ただし、体長が同じくらいのジャコウネコ科のハクビシンという哺乳動物は食性がほぼ同じのため被害から犯人を特定することは難しいです。ただし愛媛県レッドデータブック2014によると島しょ部にはハクビシンの分布はないと記述されています(島での情報がありましたら一報ください)。
◇3 被害防止の方法
(1)農地への侵入を防止する
餌付けとなる果物や野菜残渣を畑に放置しない。コンポストはふたに重しをして中身を漁られないようにする。タヌキは7.5cm程度の隙間を通過し、木登り能力があるのでワイヤーメッシュだけでは対策が不十分です。タヌキ対策には電気柵の設置が有効ですが、イノシシよりも低い位置(地面から10cm程度)に電線を張ります。
(2)捕獲で個体数を減らす
繰り返し被害を受けるようなら捕獲による個体数調整が必要となります。捕獲には箱罠を使用し、エサにはリンゴ等の果物がよいでしょう。ソーセージや練り製品、ドックフードも餌にはなりますが、犬や猫、イタチなど他の動物がかかる場合があるので使用は避けた方がよいでしょう。非常に用心深い動物なので、人里近くのエサが多い場所では罠による捕獲は難しくなります。
さいごに
野生動物なので衛生的な見地から病原菌を保菌している可能性もあるので、屋根裏や床下から物音がしないか、近くに「ため糞」がないかなど日ごろから注意をしてください。人家に棲みつくことで人畜共通感染症や噛みつきによる人身被害、ペットへの感染症の危険もあります。
※詳細は本紙をご覧ください。
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