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しまなみ農業だより

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愛媛県上島町

◆カメムシとはどんな虫?
昨秋から今春にかけて、柑橘生産者からカンキツの樹に緑色のカメムシがいると頻繁に情報が寄せられました。上島町ではあまり発生例の少ないツヤアオカメムシであることがわかりました。今春は全国的にカメムシ類の発生が多いことがマスコミ報道されています。
今回はツヤアオカメムシを中心に果樹のカメムシについて考察しました。

◇1 果樹を加害する主要なカメムシ
カメムシは外敵から身を守るため触るなど刺激を受けると特有のニオイを発する虫として知られています。果樹類ではストロー状の口で幼果や成熟果の果汁を吸収することで奇形や早期落果の原因となります。果樹を加害するカメムシ類の主要種は「チャバネアオカメムシ」「ツヤアオカメムシ」「クサギカメムシ」の3種に限定されます(写真参照)。体長は10mm~15mm内外で、気温が高い夜間に活発に飛び回り街灯などに集まる習性があります。

◇2 果樹カメムシの生活史
果樹を加害するカメムシ類は、(1)成虫の寿命が長い(約10ヶ月)。(2)産卵数が多く繁殖力が旺盛。(3)年間の発生回数(産卵回数)は1回~2回する生物特性があります。
越冬した成虫は、気温が上昇する4月下旬ころから活動が活発となり春は、サクラ・カンキツ(花)・クワ・キリなどの実を餌として植物間を転々と移動します。夏になるとヒノキやスギの実に産卵して、成虫になるまでヒノキやスギの実を餌にとどまります。この時期に虫の世代が入れ代わります。秋になると成虫はヒノキやスギを離れカキやカンキツの果実、植物の実などを餌として移動を繰り返し、気温の下がる晩秋に越冬に入ります(図1参照)。

図1 ツヤアオカメムシの生活史

◇3 カメムシの多発生要因
果樹カメムシ類の発生は、繁殖地で餌となるヒノキやスギの実に依存するため実の量が多ければ発生が増加します。全国的な人工林の増加は人の花粉症の増加ばかりでなく昆虫の発生にも影響し、果樹類では数年おきに大きな被害を受けてきました。では、人工林のほとんどない上島町でなぜ多くの成虫が見られたのでしょうか。
ヒノキやスギは夏季が高温・少雨の翌年には開花量が多くなり実がたくさんつくことがわかってきました。最近の夏は高温があたり前になり餌となる実はたくさんあり、昨年は梅雨明け以降12月ごろまで記録的な少雨と冬の訪れが遅かったように気温も高かったことから、夏に生まれた新成虫がもう1回産卵した可能性が高く、成虫の発生量が例年よりも多かったのではないかと推測できます。それでは上島町で多く見られたカメムシはどこから来たのか、島で育った個体もいると思いますが中国・四国の陸地部の人工林で繁殖した虫が餌を求めて大挙、遠方の瀬戸内海の島々に飛んできたのではないかと考えています。もともと果樹を加害するカメムシ種は大型で移動して暮らしていることから瀬戸内海を渡ることも十分考えられます。

◇4 おわりに
今年のカメムシの異常発生は、推測ですが夏から秋の異常気象がもたらした現象と考えられます。今後、続けて起こる可能性は低いと思いますが、今後も気象の変動により今まであまり見られなかった生き物が異常発生する可能性があると思います。

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